財部誠一 HARVEYROAD JAPAN オフィシャルサイト
12月23日(金)

【経営者の輪】

財部誠一公式ホームページでは今年、大きな新企画が動き出しました。
『経営者の輪』です。

私がお目にかかった経営者の方々から、
友人、知人の経営者をご紹介いただき、
次々と対談の輪が広がっていくというコーナーです。
昨日、いすゞ自動車の井田社長との対談をアップしました。
いすゞの株価31円からの闘いの話は壮絶です。

現時点では、私と直接つながっている経営者の方との対談ばかりですが、
06年には紹介の輪が大きく広がっていくと思います。

もちろん、どのようなカタチで輪が広がっていくのか、
それはわかりませんが、新しい出会いの連鎖には、新しい発見があり、
驚きや感動があるでしょう。

私のホームページを訪ねてくださったみなさんにも、
ぜひ共有してほしいものです。

『経営者の輪』に掲載されている文章は少し長いかもしれませんが、
年末・年始のどこかお時間のある時に、じっくり読んでみてください。

新年、最初に登場するのは松下電器産業の中村邦夫社長です。
キヤノンの御手洗冨士夫社長のご紹介です。

ご期待ください。

12月19日(月)

【耐震強度偽装の深い闇 その2】


14日の証人喚問で姉歯元設計士は、
仕事の大半を占めている木村建設からの「鉄筋量を減らせ」という求めをこばめば、
自分の生活が成り立たなくなるという不安から、偽装を続けてしまったと証言しました。

その是非はともかく、たしかにこの数年、建設事業者を取り巻く環境は劣悪でした。
その事実を無視したまま、今回の偽装事件を語ることは出来ません。
建設投資額の推移をみると驚くべき数字が並んでいます。

国土交通省総合政策局が公表しているデータによれば、
80年代後半のバブル経済以降で、
もっとも建設投資額が多かったのは92年で、85兆円でした。

その後96年まで、年間の建設投資額は80兆円台を維持していましたが、
その後はまっさかさまに落ちています。

建設投資額がピークであった92年度を「100」とすると、
03年度と04年度はなんと「64」まで減少しているのです。

ここまでマーケット規模が縮小してくると、業者はたまったものではありません。
激しい淘汰も起こるし、価格競争も起こりました。
建設業界では、とんでもない生存競争がくりひろげられたのです。

今回の偽装事件はこうした経済的背景のなかで起こっているのです。
建設投資額がピーク時から4割も減るという危機的な状況の中で、
ヒューザー、総研、木村建設、姉歯などいま渦中にある業者だけが、
特別にモラルが低く、たまたま事件を起こしてしまった、といえるでしょうか。

現実を知れば知るほど、今回の偽装事件の先には、
さらなる闇が広がっているように思えてなりません。

12月16日(金)

【耐震強度偽装の深い闇 その1】

今回の耐震強度偽装事件について、
何人かの建設関係者に取材をしました。

そこでわかったことは、一連の偽装問題の本質は、
責任の所在が法律上、まったく不明確なことにあります。

もちろんヒューザーのようなディベロッパーが
購入者にたいして瑕疵担保責任を負うことは法律に定められていますが、
今回のように、マンションやホテルに欠陥が発覚したとき、
誰が最終的な責任を負うのかについて法律は何も規定していないというのです。

最終的な責任を負うのは、ディベロッパーなのか、建設会社なのか、設計者なのか。
法律は何も答えをもっていないのです。

12月14日の証人喚問で繰り広げられた責任逃れの証言の数々は、
こうした法律上の欠陥を象徴しているといってもよいのです。

それだけではありません。
法律は構造設計を行う「構造士」の資格についても、
なにも定めていないのです。

一級建築士は全国に30万人以上いますが、
構造設計のできる構造士は1万人しかいないといわれています。
それだけ貴重な存在なのかと思えますが、現実はその逆です。

「大きな建物になると、設計者は3人必要になります。
 デザインを担当する意匠設計、配管など設備を担当する設備設計、
 そして建物の強度を計算する構造設計の3人です。
 しかし建物の設計者として名前が表にでるのも意匠設計者です。
 丹下健三さんや安藤忠雄さんなどの有名な建築家はみな意匠設計士です。
 彼らが面白いデザインを描いたあとで
 複雑きわまりない構造計算をする構造設計者の名前は表にはでません
 (出ることもあるが、代表者1名の名前があればそれでよい)。
 同じ設計者でも、構造設計は陽の当たらない下請け仕事に
 成り下がってしまっていることが問題なのです」
(大手建設会社幹部)

さらに驚かされるのは、この建設関係者によれば、
極端な話、意匠設計の一級建築士がひとりいれば、
構造設計は誰に頼んでもよいというのです。

「ひとつの物件にはひとり一級建築士がいればよいというのが
 法律の定めるところです。
 つまり構造設計を誰に依頼するかはまったくの自由で、
 計算さえできれば一級建築士の資格があろうがなかろうが、
 法的には誰でもよいということになっているんですよ。
 それほど日本では構造士の地位が低いということです」

信じられますか。これほど日本の法的環境はでたらめなのです。
では、どうしたらいいのでしょうか。

この建築関係者は韓国の例をひきあいにだしてきました。

「韓国はディベロッパーが全責任をもって、
 構造設計から施工、販売まですべて一気通貫で行っています。
 たとえばロッテならロッテという会社が設計、施工、販売の
 すべての責任を負うというカタチになっているのです。
 これは日本でも参考になると思いますよ」

少なくともこうした仕組みがあれば、
今回のような責任のなすりあいなど生じる余地もありません。
ヒューザーや総研や木村建設が頬かむりをして、
すべての責任を姉歯氏や検査機関に押し付けてしまおう
という態度をとることもできないのです。

その意味では、今回の耐震強度偽装事件は、
建築にかかわる法的欠陥が招いたものだという視点も忘れてならないのです。

12月14日(水)

【大阪の忘年会】

先日、大阪で忘年会をしました。
ハーベイロード・ジャパンのウィークリーレポート会員のみなさんとの忘年会です。

参加された方の多くはお互いに初対面なのですが、
さすが、大阪人!すぐにうちとけてしまいました。
やはり東京とは文化が違います。
庶民的というか、飾らない人情味あふれる土壌がありますね。

でも、大阪についてちょっと気になることがあります。
東京と比べると、大阪はちょっと愚痴っぽくなっているのです。
「マスコミは景気が回復したというけれど、大阪はまだまだダメだ」
といった類の話がどこにいっても聞かれます。

この話を忘年会の参加者に聞いてみました。
すると30代、40代の若手経営者たちが口をそろえて言っていました。

「大阪はもう一地方都市ですよ。
東京の対抗軸だった時代はとっくに終わっている」

大阪の経営者自身がこういうのです。
よくよく聞いてみれば、若手経営者たちは大阪人で
会社の本社も大阪においているものの、
売上げの多くは東京で稼いでいるということでした。

そうなんですよ。
東京はいま絶好調の好景気で、
そこここにバブル現象すら垣間見られるほどです。

だったら、東京で商売をしたらいいじゃないですか。
そのくらいの心意気と柔軟さと行動力をもたずに、
「大阪はだめや」などといっていてはいけません。

そんなことでは「商都・大阪」が泣きます。
業績の悪さを環境のせいにすることなく、
すべて自分自身の問題なのだと割り切って、頑張りましょうよ。

12月13日(火)

【松下の緊急対策】

テレビのスイッチをつけるたびに、
松下電器の「お知らせとお願い」が目に飛び込んできます。

石油ファンヒーターで一酸化炭素中毒による
新たな死亡事故が起こったことをきっかけに、
松下電器はいまマスメディアを通じて、
おびただしいほどの告知を行っています。

85年から92年までに製造されたファンヒーターの所有者は連絡をしてほしい、
という内容です。

松下はそれらの製品を5万円で買い取るか、もしくは無料で点検するそうです。
死亡事故を引き起こしたことの重大さを考えれば、当然の措置です。

しかし、耐震データ偽造問題で責任のなすりあいをしている
マンション業者や建設業者、検査機関などの無責任ぶりとくらべると、
松下電器の愚直なまでの対応は目をひきます。

またJR西日本の脱線事故や三菱ふそうのリコール隠し問題など、
重大事故を引き起こしながら、ユーザーの立場にたった対応をとれない企業が
後をたたない現実と照らしても、松下の姿勢には「誠意」が感じられます。

けしてほめられた話ではありませんが、つい、書いてみたくなりました。

12月09日(金)

【異文化コミュニケーション】

先日、帝塚山大学で異文化コミュニケーションを教えている、
米国人のジェフ・バークランドさんと対談をする機会がありました。
日本に住んですでに36年。
京都は加茂川沿いの古い町家に住んでいるジェフさんから、
日本人に関する面白いジョークを聞かせてもらいました。

米国人は象をみると、どうやって戦争に使おうと考える。
中国人は象をみると、どうやって食べるかと考える。
日本人は象を見ると、象は日本人のことをどう思っているのかと考える。

思わず笑ってしまいますが、笑えないジョークですよね。
日本人は外国からどのように見られているかを気にしすぎです。
自分がどうあるべきかを考えるまえに、
他人の評価ばかりがきになってしまうのが日本人だというわけです。

あなたは象を見たときに、どんな考えをもつのでしょうか?

11月29日(火)

【耐震強度偽造事件-不安の連鎖】

「まともなマンションに住みたければ、それなりの金額を払え」
ネット上で目に入ってきたこの書き込みには暗澹たる思いをさせられました。
連日報道されている耐震強度に関する偽装事件についてのコメントです。

いま問題になっている「ヒューザー」が販売した分譲マンションは、
東京都内にもかかわらず100平米で3000万円程度というように、
たしかに安い。

この書き込みの主によれば、発注単価があまりにも安すぎて、
建設業者は利益がだせない。
大多数の業者は、はじめから赤字覚悟で受注している、というのです。

99年以降、首都圏では過去に例をみないほどの
マンション建設ラッシュとなったものの、
バブルのピーク時と比較するとマンション価格は4割以上も安くなっており、
利益なき繁忙に陥っている業者も少なくありません。

冒頭の書き込みは「そんな厳しい現実を知っているのか」という
叫びでもあるわけです。

しかし、こうした建設業界の窮状を知れば知るほど悪夢がよぎります。
耐震強度偽装事件は、姉歯建築事務所やヒューザーなど、
いまマスコミで取り沙汰されている特定の業者だけの問題で果たしてすむのか、
という疑念を抑え切れなくなってくるのです。

もちろん今回の事件を指して「これは氷山の一角だ」と安易に言うつもりはありません。
これほどひどい偽装が日常的に行われているとも思えませんが、
マンション業者の厳しい経営実態を考え合わせると、
大小さまざまな「偽装」や「手抜き工事」が頻発しているのではないか、
という危惧をぬぐいきれないのです。

おそらく多くの国民が、こうした不安や不信感を抱いているのではないでしょうか。
国や行政は今回の偽装事件に巻き込まれた人々を救済するのは当然ですが、
日本中に広がりつつある「自分のマンションは大丈夫なのか」という
不安の広がりに対しても、積極的に対応していかなければなりません。

11月15日(火)

【増税論者は抵抗勢力か?】

13日のサンデープロジェクトには
消費税率アップをめぐって対立する2人の大臣が出演されました。

「増税だけを先に議論するのは形を変えた抵抗勢力だ」
と言いきった竹中平蔵総務大臣と、
「消費税議論をすると、歳出削減努力が緩むと考える人は、
 財政の深刻さを十分認識していない」
とする与謝野馨経済財政・金融担当大臣の2人です。

まずは政府の無駄をなくす歳出カットが先なのか。
それとも、歳出カットも増税も、同時に行っていくべきなのか。

歳入歳出一体で改革をするしかないというのが私の基本的なスタンスなのですが、
じゃあ、私は与謝野大臣と同じ立場なのかというと、そうともいえません。

なぜなら、歳出カットが履行されるという保証などどこにもないからです。
下手をすれば無駄な歳出カットは何もすすまないまま、
消費税の税率アップだけが行われてしまうというリスクを
考えないわけにはいきません。

過去にも行政の無駄をなくそう、
公務員の数を減らそうという議論はあまたありました。

しかしこうした行政改革の議論がわきあがってくると、
同時並行で財政再建の議論も沸騰してきて、
いつのまにか「行政改革」が「行財政改革」という言葉に置き換わり、
目的が不鮮明になってしまうのです。

行政の無駄をなくす行政改革と財政改革とは似て非なるものです。
行政改革は財政再建に寄与しますが、増税で財政再建をすすめても
行政改革は一歩も前進しないということを認識しなければいけません。

竹中大臣と与謝野大臣との対立は「行政改革」を先行するのか、
それとも「行財政改革」を一体で進めていくのかという違いですが、
過去の歴史では、後者は必ず裏切られることを示しています。
「行財政改革」といった瞬間、「行革」が脱落するというのが過去の歴史なのです。

日本の財政は危機的で、歳出のカットだけでなんとかなるような次元ではありません。
増税は必至です。

だからこそ、大急ぎで行政の無駄を徹底的に省く努力をすべきなのです。
「行財政改革」という曖昧なことをせず、
急ぎに急いで「行政改革」を進めるべきでしょう。

11月07日(月)

【本当の行革】

破綻寸前の日本の財政事情を考えれば、行革はあたりまえです。
徹底的に役所の無駄をなくしていくなどということは、いわずもがな、です。
ただし、行革にはとんでもない落とし穴があります。

それは「数合わせ」です。
これだけは絶対にやってはいけません。

典型的な失敗例をあげてみましょう。
橋本内閣が行革の目玉として行った省庁再編です。
これはもうはっきりいって「冗談だろ」というべきしろものでした。

たしかに役所の数は半分になりました。
1府22省庁が1府12省庁になったのですから、
役所の数はたしかに半分になりました。

しかしその実態はといえば、役所と役所を表向き統合しただけで、
なんの無駄とりにもなっていなかったのです。

行革とは「無駄」をなくすことでしょう。
必要のない仕事を排除して役人の数を減らして、
はじめて無駄をなくしたことになるわけです。

つまり行革とは無駄な役人の仕事を減らすことなのです。
ところが橋本内閣の省庁再編はひどかった。

たとえば国土交通省。
ここは旧建設省と旧運輸省と旧国土庁の3つ統合されたのですが、
国土交通省のなかで、この3省庁はそっくりそのまま、残っているのです。
建設省は建設省、運輸省は運輸省として。

それどころか、役所は大臣官房に優秀な人材を配置して、
旧省庁意識をまるだしにした陣取り合戦を行っているというのが現実です。

たしかに大臣の椅子は3つから1つに減りましたが、
国を挙げて大騒ぎをした行革の目玉がこんなていたらくにおわっているのです。

じつはいま話題の政府系金融機関の統合でも、
また同じ失敗が繰り返されようとしています。
また「数」なのです。
8つの政府系金融機関を1つにする!

いかにも勇ましく聞こえますが、
表面上の数を減らしただけでは、なんの価値もありません。
統廃合にかかる労力とコストがむだになるだけです。

「数」が減ることが「行革」ではない。
「無駄な仕事」を減らすことが行革なのです。

ここを間違えると、数を減らしたことを実績として誇る政治家のアイデアは、
実態として仕事が残ればいいと現実的な対応をする役人から
骨抜きにされる恐れがあります。

「数」ではなく、無駄な「仕事」を減らせるか、どうか。
そこに行革の真実があることを知ってください。

10月22日(土)

【経営者の輪】

10月21日、財部誠一オフィシャルホームページを全面的にリニューアルしました。

デザインも一新しましたが、
目玉は「経営者の輪」という新企画です。

これは私がお目にかかった日本を代表する、何人かの経営者を基点として、
知人の経営者を紹介していただき、私がインタビューをする。
その経営者にまた知人の経営者を紹介してもらって
インタビューをするというもの。

『笑っていいとも』の「友達の輪」の経営者版のようなものです。

第1回目は、経団連の次期会長の呼び声高いキヤノンの御手洗社長です。
是非、ご覧ください。

また、これからさき、どんな展開になるのか。
それを楽しみに、時々、当ホームページを訪ねてみてください。

10月03日(月)

【世界最高の優良企業GEの秘密】

GE(ゼネラル・エレクトリック社)をご存知でしょうか。
かの発明王エジソンが創業してから、126年という長きにわたり、
常にその時代の最先端を走り続け、成長し続けてきた、とてつもない会社です。

世界のビジネスリーダーたちが凝視し、憧れる会社、それがGEです。
そのGEの会長兼CEOであるジェフ・イメルト氏に
単独取材をする機会にめぐまれました。

GEを20年間率いたカリスマ経営者、ジャック・ウェルチ前会長から
イメルト氏がバトンを引き継いだのは2001年9月7日。

最悪のスタートでした。
就任から4日後に「9.11同時多発テロ」が勃発。
米国経済が急速に萎縮していくなか、GEの成長にも急ブレーキがかかったのです。

2000年には60ドル台だったGEの株価は、2002年には23ドルまで下落。

また93年から続いてきたGEの2ケタ成長も2002年にはストップ。
「GE神話の崩壊」が米国のマスコミでささやかれるようになりました。
米国産業界のカリスマだったジャック・ウェルチ氏から
ジェフ・イメルト氏へと、世代交代が起こったとたんに、
最強のGEが失速してしまったのです。

ところがGEはその後、あっという間に勢いを取り戻し、
ウェルチ会長時代を大きく上回る収益をだす企業へと進化したのです。

04年12月期決算でGEの売上高は1523億6300万ドル。
純利益は前年比10%増の165億ドルに達しました。
2005年1〜6月期も純利益が86億ドル、
21%増という凄まじい伸びをみせました。

このままいけば2005年度通期の純利益は190億ドルと予想され、
ウェルチ会長時代の最後の決算となった2000年度の純利益127億ドルを、
大幅に上回っています。

そこには4年間で、日本円にして約7兆9000億円もの事業資産の売買が行われ、
今年6月に11あった事業部門がいまでは6部門に集約されるというような、
「選択と集中」がありましたが、
それ以上に、大きく変わったのは社員の意識でした。

イメルト会長は社員たちに
「利益成長率」という目標を突きつけたきつけたのでした。
従来、GEでは既存事業の利益成長率の目標は「5%」でした。
それをイメルト会長は「8%」にひきあげたのです。

しかし目標数字をあげさえすれば、
それだけで会社全体の業績がアップするというほど単純ではないでしょう。
5%から8%へと目標数値を引き上げたことの意味を
イメルト会長に尋ねてみました。

「数値目標は、しっかりした基礎ときちんとした規律に支えられているかぎり、
 いつも人々にやる気を起こさせ前進させるものだと思います。
 ですから常に会社は目標を高く設定して、社員のやる気を引き出し、
 進歩し続けるようにしているのです。
 我々が目標値を5%から8%に引き上げようという議論をした時、
 基本的にはそのままでもよいと思っていました。
 ただ従業員の向上心ということから、
 上げた方が彼らの達成感に訴えるのではないかと考えたのです」

しかし、そうはいっても30万人もの社員がいる巨大組織の社員たちに、
目標値をあげるよと号令をかければ、それですむというはずがありません。
彼らのモチベーションをあげるために、どんな仕掛けが準備されたのでしょうか。

イメルト会長は淡々とこう続けました。

「部下にただ単にもっと業績を上げろと言うだけではダメです。
 そのためのツールや戦略や基礎的な過程がなければ無理です。
 適正な資金や改善のためのツール、
 又それをより良くやり遂げることが出来る能力を与えてやれば、
 人は目標が達成可能であることを認識します。
 そしてより熱心に働き、結果的に目標を現実のものにすることが出来るのです」

イメルト氏はさらに興味深い話を聞かせてくれました。

「私はいつもやる気を起こさせるには『頭』と『心』と『財布』の
 3つが揃う必要があると思っています。
 人々を賢くすることがまず必要です。
 トレーニングをして働いてもらう。
 アイデアを市場に送り出すことや発明など、すべて頭から出てきます。
 心については、プライドという観点から説明できます。
 何かの一員としての誇りを持たせること、
 もっと良い結果を出したいと思わせること。
 何か素晴らしいことが起こるのを見たいと思わせ、
 そのためには必死に働こうと決意するように仕向ける。
 そして財布ですが、これは良い仕事をした人への報酬です。
 しなかった人には報酬はありません。
 金銭的報酬で良い仕事をした人に報いることは、
 社員のやる気を引き出す上で大変重要です。
 アイデアは頭から、やる気は心から、報酬は財布からという
 コンビネーションが最強だと私は信じています」

頭と心と財布。
その通りですね。

09月21日(水)

【20世紀の鬼才経営者、逝く】

9月19日、ダイエーの創業者である中内功さんが亡くなりました。

最後にお目にかかったのは、東京から大阪にむかう飛行機の中でした。
偶然にも座席が隣り合わせとなり、
1時間足らずでしたが、ゆっくりとお話をすることができました

ダイエーを産業再生機構に持ち込むのか、
それとも自主再建の道を目指すのか、
そんな議論が出始めた頃で、中内さんにとっては、
たいへんつらい時期だったと思います。

私はテレ朝系の情報番組「サンデープロジェクト」で
三度もダイエーを特集してきました。

「サンデープロジェクト」の特集は取材期間が半年から1年に及ぶことも珍しくなく、
ダイエーとの関わりも長く、深いものとなりました。

最初の放送はダイエーが上場以来、初めて赤字に転落した98年でした。
私はその特集のなかで中内さんを批判しました。

中内家のファミリー支配から脱却して、
抜本的な改革をしなければダイエーには未来がないと申し上げたのです。

番組終了後、中内さんから連絡があり、食事をさせていただきました。
私はその時のことが、忘れられません。

ダイエーの将来を私なりに真剣に考えた末の発言とはいえ、
中内さんに批判的なコメントをTV番組のなかでしたのですから、
何がしかのお小言を頂戴するはしかたない。
そう覚悟して会食の場にのぞんだのですが、そんな心配をよそに、
中内さんはとつとつとダイエーの現状について語りました。

じつはその時、私の頭の中には、
どうしても中内さんに尋ねてみたい、ある疑問がありました。
それは中内さんの経営に対する尋常ならざる執念がどこからくるのか、
ということでした。

戦後の混乱の中で創業し、自らの手で日本一の流通業者へと育てあげたのですから、
その経営に執着するのは当たり前といえば当たり前なのですが、
中内さんにはそれだけではすまない、
尋常ならざる執念がただよっていたのです。

「ダイエーの経営に対する凄まじい執念は、どこから生まれてくるんですか」

そう尋ねてみました。

すると中内さんは「私はね、時々、夢をみるんですよ」
と切り出したのです。

「戦争中の夢です。敵の兵士が銃口を私の頭に突きつけている。
  そして私の横には、私の両親と妻と子供たちが並んでいる。
 敵兵が私に向かって、こう言うんですよ。
 『お前が死ぬか、家族が死ぬか、どちらがいいか返事をしろ』。
 家族を助けてくれというのが普通なのだろうが、
 私は、俺を助けてくれと言いそうになり、その恐ろしさで目が覚める」

自分自身でも制御しがたい、恐ろしいまでのエネルギーが
「生きる」ことへの執着となって心の奥底から突き上げてくる、
ということです。

私はこの話に身震いがしました。
日本の流通業界に価格革命を起こしたこの人物は、
80才を目前にしてなお、経営に対するやむにやまれぬ想いにとりつかれ、
それはもう自分ではどうにもできないのだと告白しているように
私には感じられました。

常人ではありません。

その中内さんから、大阪にむかう飛行機のなかでお目にかかった2日後、
私のもとに手紙が届きました。
巻紙に墨で書かれたその手紙には、こう、記されていました。

「ダイエーの後輩たちは一生懸命やっています。
どうか、暖かい目で見守って欲しい」

それから数ヵ月後に、ダイエーの産業再生機構入りが決まりました。
事実上の破綻認定です。
ついにダイエーは中内さんの手から完全に離れてしまいました。
20世紀に流通革命を起こした鬼才は、その現実を、どんな思いで眺めたのでしょうか。

阪神大震災の前に引退していれば、
中内さんは偉大な経営者として歴史にその名を刻んだにちがいありません。
それを思うと、複雑な気持ちになります

ご冥福をお祈りしましょう。

09月16日(金)

【白神山地 パート2】

8月30日に本欄に掲載した原稿「白神山地」に対して、
次のようなメールを送ってくださった方がいらっしゃいました。
環境問題のこと、公共事業のこと、そして世代間格差の問題など、
いろいろなことを考えさせられるメールでした。

ご覧ください。

****************************************************

「私は10年前、高校時代よく白神山地に川釣りに行っていました。
当時は自転車で3時間位かけて行ってました。
大自然の中で釣りするのがおもしろかったんです。
川に入って嫌だったのが、
一回堰堤(土砂の流出を防ぐ人口滝みたなもの)工事をした川。

魚の数がすくなくて、川底にヘドロがたまって臭いんですよね。
折角の自然が勿体ない。しらけてしまいます。
この堰堤がかなりの数あるんですよね。
こんなに必要なのかっていつも疑問におもうんです。
白神山地の水を蓄える目屋ダムも十分足りているように思えるのに、
また拡張工事を行っています。

二十歳を過ぎて友達の土木業者が白神山地周辺で
ダムの工事をするといっていました。
世界遺産登録地域外なのでしょうが・・・。

本当に必要があるのかどうかは、データが無いのでわかりません。
素人にはわからないと思って、白神山地を公共工事のネタにして
金儲けをしているのではないかと勘ぐってしまいます。

他の山も工事されまくっています。
工事必要と思えないような小川まで工事されているし・・・。
自然を見に行ったのに公共工事の無駄使いをみて
ゲンナリしてしまうっていうのは嫌な社会だなーって思いました。

こんなもののツケをこれからの世代が
支払っていかなきゃいけないのかと思うと頭にきます」

****************************************************

若い世代へのツケ回しは、
年金や医療費など膨張一途の社会保障費をどうするか
という問題にもつながっていきます。

大勝した小泉自民党は、
こうした若い世代にどんな回答をだすのでしょうか。
しっかりと見ていかなければなりません。

09月12日(月)

【自民圧勝】

自民党単独で296議席、公明党とあわせた与党で327議席。
衆院選挙は自民党の圧勝、民主党の大惨敗という結果に終わりました。

9月2日付けの本欄で

「民営化に賛成か反対かという単純な二者択一の構造を
小泉首相は作り上げることに成功しています。
自民党は民営化に賛成で、野党はみな反対。
自民党は改革で、野党は既得権の維持をめざす守旧派だという
イメージを作り上げようとし、
世間はまんまとその戦略に乗せられているように見えます」

と書きましたが、民主党は最後の最後まで、この構図を崩すことができませんでした。

いまにして思えば、刺客作戦も、計算づくだったのでしょう。
自民党内で郵政民営化に反対した議員には公認を与えず、
刺客を送るという作戦は激情にかられた果てではなく、
自民党の改革イメージを強烈にアピールする効果を十二分に発揮しました。

それはもう単なるレトリックを超え、
自民党自身が大きく変わったという印象を有権者に与える効果まで
もったのかもしれません。

刺客として送られた落下傘候補たちは、政治の世界とも無縁、
地元とも無縁という点で、一見すると、非力にも見えたし、
デタラメな人選ともうけとれましたが、見方を変えれば、
それは地元への利益誘導という古い政治体質との決別ともとれます。

利益誘導政治の象徴のような存在であった亀井静香氏に
ライブドアの堀江貴文氏をぶつけた広島6区などは、
利益誘導政治との決別を演出するには最高の舞台となりました。

「自民党をぶっ壊してでも改革をすすめる」
小泉首相の言葉が有権者の耳の奥で心地よくリフレインされたのです。

一方、民主党はといえば、亀井静香氏と同じシチュエーションに追いやられ、
郵政民営化に反対だというレッテルを最後の最後まで剥がすことができませんでした。

本当に改革を進めるなら政権交代をするのが一番の早道であるのに、
多くの有権者は、生真面目に政策論争をし続けた
民主党の岡田代表の言葉には耳を傾けませんでした。

いや、傾けたとしても、小泉首相が発する単純なメッセージと比べると、
岡田代表のメッセージは中身はあるが、わかりづらかった。
そのぶんだけ、改革者としてのエネルギーや変化への期待感を有権者は
見出すことができなかったのです。

政権与党に強烈な「改革者」のイメージを作り上げられてしまったうえに、
政策論争という正攻法でしか立ち向かうことができなかった民主党。
これでは勝負にならない。

それにしても今回の選挙は悔いの残る選挙でした。

いい民営化なのか、ダメな民営化なのか、郵政民営化法案の中身については、
ついに最後まで議論されずじまいで終わってしまったからです。
しかしどんな民営化にしろ、こと郵政に関する限り、
国民は小泉政権に白紙委任を与えたのです。

いかなる結果になるのか、見守っていくよりほかありません。

09月08日(木)

【似たり寄ったり】

いま取材で米国に来ています。
NYで、あるヘッジファンドの運用担当者と会っていた時のことです。

「日本の選挙はどうなるんだ?」と尋ねられたので、
「どの調査でも、自民党が有利という結果だ」と答えました。

すると彼は「じゃあ、日本の改革は継続するのだね」
とおっしゃるではありませんか。
それはあまりにも短絡的です。

「外国から表面をなぞるだけでは、本当の姿はわからない。
 小泉改革は確かに改革だが、具体的な中身をみると穴だらけで、
 小泉政権の継続が必ずしも構造改革の継続を意味していない。
 中身のある改革なのか、空洞化した改革なのか。
 それが問題なのだ」

私がそう嘆くと、彼はいかにも合点がいったという表情を作って
こう続けました。

「米国もそうだ。ブッシュ政策の中身を本当に理解しているのは
 国民の5%くらいのものだろう。9.11のテロの時だって、
 米国民の70%はイラクがやったと信じ込んでいたのだから」

世界中どこにいっても、世の中こんなものだということでしょうか。

09月02日(金)

【小泉首相の罠】

テレビメディアを通じた党首討論は興味深い。

各党首の発言の多くは紋切り型で、
同じことの繰り返しが目立つけれど、
そこはテレビの生番組のいいところで、
他党の党首や司会者からの突然の突っ込みに、
本音がポロリとこぼれたり、言葉にこそならなくても、
一瞬の表情の変化がその人の本音を能弁に物語ってくれるからです。

つい先日、TBSの「ニュース23」が通常の時間枠を延長して
党首討論を放送していましたが、
出色だったのが新党日本の党首となった田中康夫長野県知事の、
小泉首相への“突っ込み”でした。

田中知事は郵政民営化に反対なのではなく、
民営化賛成の立場の人から見ても、
小泉自民党が執着している民営化法案は、
穴だらけでまともな民営化ができない「ザル法」で、
まともじゃないが賛同できる法案ではない
という趣旨の発言をしていました。

真実はまさに、ここにあります。

民営化に賛成か反対かという単純な二者択一の構造を
小泉首相は作り上げることに成功しています。
自民党は民営化に賛成で、野党はみな反対。
自民党は改革で、野党は既得権の維持をめざす守旧派だ
というイメージを作り上げようとし、
世間はまんまとその戦略に乗せられているように見えます。

少なくとも現時点において、私の目にはそう見えます。

しかし、本当の問題は郵政民営化をするかしないではなく、
名ばかりの民営化で終わらせるのか、
それとも本当に実のあるいい民営化にするのか、
という対立軸がないことなのです。

妥協に妥協を重ねてきた自民党案は、田中知事の指摘どおり、
ザル法です。

郵政公社の利益の9割は郵貯があげていますが、
その郵貯を縮小する一方で、
全国に広がる収益性の低い郵便局のネットワークを維持していく
などという、魔法は存在しません。

それどころか、民間金融機関の歴史を見ればわかるとおり、
資産を縮小しながら発展してきた金融機関はひとつもないのです。

限りなく縮小均衡して、赤字の郵便局はすべて廃止にし、
人員も思い切った合理化をするというなら、
郵政民営化という言葉がリアリティをもってくるのですが、
郵便局のネットワークは守ります、雇用も守ります、
そのために2兆円の基金を用意します、しかし、郵貯は縮小です・・・
という議論は言葉遊びの政治の世界でしか通用しません。

経営の現実から眺めたら、荒唐無稽の夢物語りでしかありません。

それをわかって民営化を叫んでいるのか、それともわけもわからず、
ただ民営化という概念に陶酔しているだけなのか?

本来なら、民主党が「いい民営化」の対案を出すべきだったのですが、
民主党は単純な「郵政民営化反対」の立場をとりました。
その結果、「郵政民営化に賛成か反対か」という
小泉首相の単純化の罠に陥ってしまいました。

こうしたイメージが今後の選挙戦のなかで、
どう変わっていくのか、いかないのか。
そんなところにも注目してほしいものです。

08月30日(火)

【白神山地】

先週、世界遺産の「白神山地」に行ってきました。

仕事で秋田にいった折に、日帰りができず、
翌日の飛行機の時間まで少し時間があるということになったので、
この機会を逃すわけにはいかないとばかりに、
勢い込んで行ってきました。

ほんのわずかでもいいから、
深々としたブナ林の静寂のなかに身を置いてみたい。
そんな気持ちになったのです。

はじめてみる白神山地は想像以上にすばらしいものでしたが、
驚くべき風景が目に飛び込んできました。

なんと白神山地に送電線がひかれていたのです。
地元の人に聞けば、白神山地を流れる3本の川のひとつをせき止めて、
そこに小さな水力発電所を設け、青森方面に送電しているというのです。

よくそれで、世界遺産に登録されましたねえ。
なんとも複雑な思いになりました。

考えてみれば、いつもそうなんです。
現地に行ってみないと本当のことはわからない!
取材をしなければだめですね。

08月11日(木)

【刺客!?】

小泉首相が反対派に刺客を送っているという話が伝わってきます。

反対派の急先鋒であった小林興起氏の地盤である東京10区から、
小池百合子環境相が出馬するというのです。
そして反対派のドンである亀井静香氏の選挙区には、
竹中平蔵郵政民営化担当相が参議院から
鞍替えするかたちで出馬するという話を聞きました。

本当でしょうか?

もしそれが事実なら、小泉首相は大きな間違いを犯しています。
それは、ただの報復だ。
あまりにも質が悪い。

そんなものをみせつけられて、気持ちのいい国民がいるでしょうか。

郵政民営化への賛否、自民党政権への支持、不支持に関わりなく、
まったくもって気分の悪い話です。

この報復劇が本当の話なら、私はそんな人間に、
国をまかせる気にはとうていなれません。

08月10日(水)

【政界大再編!?】

今年は本当に暑い夏ですが、解散―総選挙で、
さらにまた日本列島はヒートアップするのでしょうか。

それとも野に下った候補者たちが熱くなるだけで、
小泉首相がいうところの「郵政民営化解散」を
国民はしらけた気持ちで聞き流すのでしょうか。

小泉さんは9.11総選挙の争点は「郵政民営化への賛否」であり、
改革に賛成するのか、反対して抵抗勢力にくみするのか、
というお得意の単純な対立構造へ持ち込もうとしていますが、
日本の現状は、郵政民営化法案ただひとつをめぐって
総選挙をやるほど楽観できる状況ではとうていありません。

年金改革、医療改革、そして国がかかえこんだ巨額の長期債務
(「借金時計」参照) のことを考えたら、
郵政民営化にしか関心をいだけないという政権運営には、
私は正当性を見出すことなどできません。

しかも郵政民営化の名が欲しいばかりに、
ありとあらゆる妥協を繰り返した結果、
小泉政権が参議院に提出した法案は、道路公団民営化と同じように、
中途半端で実のないものになってしまいました。

自民党のある参議院議員が「妥協に妥協を重ねて、
反対派も賛成できる内容になっていたのだから、
小泉さんももう少し上手にやれば可決されたにきまっている」
と言っていた通り、骨抜きもいいところなのです。

それでも「民営化」の名をとることに執着し続ける
小泉さんという人を、私は理解することが出来ません。

いま必要なことは「財政再建」です。
「小さな政府」の掛け声ではなく、
本当に小さな政府を作るために必要な対策をこうじることです。

それができるのは自民党なのか。
それとも民主党なのか。

私たちは自民党政権の継続を望むのか、
それとも政権交代を望むのか。
それが次の選挙の最大のポイントであろう、
と私は考えています。

もしかしたら、その先には、
政界大再編の大きなうねりが待っているかもしれませんね。

さて、明日から私は、夏休みです。
NYでしばし、頭を空っぽにしてきます。

08月05日(金)

【郵政国会、否決、総辞職!?】

大詰めを迎えた郵政国会。
郵政法案は参議院で可決されるのか、
それとも否決されるのか。

8月8日の採決で法案が否決されれば、
首相は解散総選挙にうってでると報道されていますが、
じつはもうひとつの選択肢があります。

内閣総辞職です。

ポイントは反対票の数です。
信頼できる政治記者によれば
「自民党内の反対票が25票から30票に
せまる勢いになったときには、小泉首相も解散は出来ない。
そこまで反対されたら、
内閣総辞職を選択するしかない」とのこと。

僅差で否決なら解散だが、
25票以上の反対票が自民党内からでるようなら総辞職。
そんなシナリオが永田町でいま(5日現在)語られています。

こうなると、反対派は勢いづきますね。
反対票を集めれば集めるほど解散も阻止できる、
ということになるからです。

はたして、どうなるのでしょうか。

08月04日(木)

【人民元切り上げの真相】

日本国内の報道とは全然違う!

いつものことと言えばいつものことですが、
今度の中国取材も驚きに満ちていました。

日本国内で事前に収集した情報は、現地にいってみると、
まったく違っているということがままありますが、
今回の「人民元切り上げ」に関連する取材もまたそうでした。

7月21日に中国の人民銀行は、
1ドル8.27元に事実上固定されていた為替レートを
1ドル8.11元へと、2%の「切り上げ」を実施しましたが、
それと同時に、為替制度そのものを変更しました。

これまでは、ドルだけにリンクする「ドルペッグ制」でしたが、
これからは複数の通貨によるバスケットにリンクする
「通貨バスケット制」に移行する、と日本国内では報道されました。

「通貨バスケット制」とは、ごく、かんたんにいえば
「ドルやユーロ、円といった複数の主要通貨で構成する
“バスケット”に自国通貨を連動させる制度」のことです。

ところが今回の取材で驚くべきことが判明しました。

「バスケット制に移行したといわれましたが、
中国人民銀行の周小川総裁の記者会見をよく聞いてみると
『参考にしていく』と言っているのです。
本当のバスケット制ならば、
バスケットに人民元を連動させるということになるわけですが、
周総裁は『バスケットを参考にしながら、調整していく』
といっている。
ドルペッグの時は1ドル8.27元を目指してやっていくと
明確だったが、今回の通貨制度改革で人民銀行の自由度は
逆に高まった。不透明性が増し、よくわからなくなってしまいました」(ジェトロ関係者)

これでは日本国内で報道されている事実とあまりにも違いすぎます。
いやあ、びっくりしました。

07月29日(金)

【青島より】

上海、大連とまわって、今日、山東省の
青島(チンタオ)につきました。
かの有名な青島ビールの地元です。

電子辞書をひいてみると
「夏季比較的涼しいため避暑地として利用される」
と書いてあるのですが、日中はやはり暑い。

今日の日中は、どう考えても気温は30度を
超えていたと思います。

大連が涼しかっただけに、
よけいに暑く感じるのかもしれません。

明日は中国野菜を冷凍輸入する日本企業へ
取材にいく予定です。

人民元切り上げに関する、
また違った一面が見られることを期待して、
今日は休むことにしましょう。

07月27日(水)

【上海にて】

人民元の突然の切り上げの5日後から中国に来ています。

 ***************************************

今回の人民元の切り上げを、日本を含め、外国のメディアは
「米国との貿易摩擦」の視点からしか見ていません。

巨額な対中貿易赤字をかかえる米国の不満。
その米国からの強烈な引き上げ圧力が、
今回の中国の人民元改革につながったという見方です。

基本的にはまったく、その通りなのですが、
じつは中国には中国の国内事情があったという視点が
脱落しています。

「中国には中国の国内事情があります。
一番大きな問題は2つ。
銀行の不良債権問題と都市と地方の格差の問題です。
なかでも銀行の不良債権問題は
短期的に決着がつく問題ではありません。
5年、へたをすれば10年かかる話です。
こうした構造問題を抱えているさなかに、
人民元の切り上げを目論んだ投機資金が大量に流入することは、
中国政府としても放置できなかったのです」

これは中国のあるシンクタンクの専門家の話ですが、
中国に進出している日系企業の経営者も
まったく同様の見解を語っていました。

「中国には増値税という日本の消費税のような税があるのですが、
輸出促進のために、輸出品には増値税の還付制度があるのです。
たとえばエレクトロニクス製品などは17%の増値税の
すべてが還付されます。
つまり、対米貿易黒字(米国からみれば、対中貿易赤字)を
減らすことだけを目的とするなら、
2%の元の切り上げなどをやるよりも、
増値税の還付制度をなくすことを優先するはずなのです

つまり、単純に海外からの人民元切り上げ圧力に
中国が屈したという見方は
あまりにも視野狭窄だということです。

中国という国は、まず自国の事情を最優先に考える国だ
という視点をわすれてはなりません。
中国で取材をすればするほど、そんな印象が強くなってきました。

07月25日(月)

【そのタイミングにサプライズ!】

明日から中国に取材にいきます。
北京、上海、大連、青島とあわただしい旅程です。

目的は「人民元の切り上げ」が対中進出している日本企業に
どのような影響を及ぼし、またどのような対抗策を
彼らがこうじているかを検証することです。

じつは6月から予備取材を始め、
来るべき時に備えていたのですが、
取材直前の21日に、予想をはるかに裏切って、
中国政府が突然「人民元の切り上げ」に踏み切ったものですから、
個人的にもびっくり!

切り上げ幅はわずか2%にすぎず、また変更された通貨制度も、
予想通りの「通貨バスケット方式」であったことなどを考えると、
何の驚きもありませんでしたが、
中国政府のうまさは発表のタイミングでした。

胡錦涛主席の訪米が9月であることから、
早ければ8月にも元の切り上げがあるのではないかというのが、
大方の予想でした。

7月中に踏み切るとは、誰も予想しておらず、
その点で、今回のニュースはサプライズに満ちていました。
中国らしいというか、じつにうまいやりかたでした。

もっともこれは入り口にすぎません。
この先、どこまで人民元が上昇していくのか。

1年後に10%まで上昇しているという人もいれば、30%という人もいますが、
不透明なバスケット方式(中国は元がリンクするバスケットの
中味について何も明らかにしていません)のもとで、
今後も中国政府は意図的に為替介入をし続けるでしょうから、
実際にどうなるか、先を読むのはきわめて困難です。

ただし、そうはいっても、固定相場制と変動相場制の中間に
位置するバスケット方式まで中国がやってきことは、
やはり前進です。

通貨制度改革の第一歩として評価してよいのではないでしょうか。
では、中国からの現地報告、楽しみにしていてください。

07月22日(金)

【毎日更新!】

心の中ではいつもそう思っているのですが、書ききれません。
日常的に私のサイトを訪ねてくださっている方々には、
本当に申し訳なく思っています。

さて今、私は大阪のテレビ(朝日放送の『ムーヴ!』)に
出演するために、羽田空港におり、
フライトまでのあいだに、この原稿を書いているという状況です。

じつは午前中、日産自動車の志賀俊之COO(最高執行責任者)の取材に行ってきました。

カルロス・ゴーンさんがルノーのCEO(最高経営責任者)を兼任することに伴って、
ゴーン氏の代行をする役割としてCOOに選ばれた人物です。

ゴーンさんの印象があまりにも強烈すぎることもあるでしょうし、
COOになってからまだ日が浅いということもあり、
マスコミを通じて伝わってくる志賀さんの存在感は
まだ大きくありません。

しかし、あのカルロス・ゴーンさんが矢を立てた人物です。
相当の力量と個性を持っているに違いない
と私は以前から見ていましたので
今回、『フィナシャル・ジャパン』という月刊誌の
インタビューでお目にかかるのを非常に楽しみにしていました。

この人事が長い目でみた時に日産にとって吉と出るのか、凶とでるのか。
私自身の目で確かめてみたかったからです。

雑誌が発行される前に、ペラペラ話してしまうのは
道義的にも許されませんから、ここでは詳しく触れませんが、
志賀COOは、なかなかの経営者でした。

カルロス・ゴーンという強烈な個性の持ち主が
急激に復活させてきたという日産自動車の
プロセスの特異性は、いったいどこにあるのか。
すでに一般化、システム化された新しい日産自動車の
意思決定の仕組みを、健全に機能させていくためには
何が必要なのか。

彼は明快な回答を示してくれました。
しかも人もいい。魅力的な人物でした。

ご興味のある方は、『フィナシャル・ジャパン』の
10月号をごらんください。

じつはこの号で財部スペシャル企画をやります。
今私が会いたい経営者5人とのインタビューを通じて、
いま日本経済が抱えているさまざまな問題を掘り起こし、
解き明かしていこうという企画です。

面白いものになりそうです。

07月12日(火)

【ユニクロ会長が社長復帰】

ユニクロの時計が逆回転をし始めました。
ユニクロの創業者である柳井正会長(56歳)が、この8月、
社長に復帰するという記事が今朝の日経新聞にでていました。

ユニクロはフリースの大ヒットにより
01年8月期に売上高4185億円、経常利益1300億円と
史上最高益を記録しました。

ところが翌年以降はその反動で売り上げ、利益ともに
大きく落ち込みました。

その打開策として、柳井氏は02年11月に社長職を辞して会長となり、
後任社長に、当時40歳だった玉塚元一氏を大抜擢したのです。

慶応大学ラグビー部出身の玉塚氏は、見た目にも精悍で、
新しいユニクロの象徴として、マスコミからも大きな注目を浴びました。

玉塚社長の3年間、ユニクロの業績はたしかに横ばいではあったけれど、
とりあえず下落傾向に歯止めをかけ、
新しいユニクロのイメージを確立しつつあったと
私はそれなりの評価をしていました。

しかし、柳井氏は売上高3800億円、経常利益600億円と予想されている
05年8月期決算の水準に危機感を抱いているというのです。

「『世界で生き残るのに必要な売り上げは1兆円』と
 持論で掲げた目標は現在の約3倍。
 会社の若返りをになった玉塚元一社長も
 柳井氏が要求する高いハードルを越えることはできなかった」
 (7月12日付け日経新聞15面より)

しかしこの記事の主張には納得がいきません。
そこまでの要求をするなら、なぜ、
02年に柳井さんは玉塚さんに社長ポストを譲ったのでしょうか。

そもそもユニクロの人事は中途半端でした。

柳井さんは会長に退いたといってもCEOであり続けたのです。
ですから、たしかに社長は玉塚さんに交代しましたが、
実質的なユニクロの支配者は
ずっと柳井さんだったといって間違いではないでしょう。
それがCEOというものです。

ですから、ユニクロの現状に問題があるのなら
それは柳井さんの責任であるし、
玉塚社長に問題があったとしても、
彼を社長に大抜擢したのも柳井さん自身ではありませんか。
後味の悪い人事ですよね。

できれば柳井さんに直接、話をうかがってみたいものです。

07月07日(木)

【石油危機!?】

原油価格が急騰しています。
昨日、ニューヨーク原油が1バレル60ドルをつけたのをきっかけに、
東京市場でも中東産ドバイ原油が続伸して、
1バレル54を上回り、史上最高値となりました。

そんななか、今朝の日経新聞にいやな記事がでていました。
「1995年に日量160万バレルだった原油生産量は
2004年に108万バレルに減少。
昨年は初めて原油順輸出国に転落した」そうです。

油田開発が停滞して原油生産が低迷していることが原因だと日経は報じていますが、
その結果、インドネシア国内では既に3割も値上げされているガソリンの供給が、
大都市では7月から5%削減されました。

原油価格をきめるのはNYやロンドンや東京などにある先物市場です。
先物市場の価格をもとに、現物の取引価格が決まります。
先物市場は思惑によって価格が激しく上下します。

そんななかで石油の輸出国であったインドネシアが
逆に石油の輸入国に転落し、
国内でガソリン不足が深刻化しているというニュースは、
先物市場におかしなインパクトを与えなければよいのですが・・・。

それにしても、世界の原油事情が急変しているというのに、
日本国内では危機感がまるでありません。
石油のほぼすべてを輸入に頼っているというのに、
なぜ日本はこうも鈍感でいられるのでしょうか。

じつは鈍感でいられるだけの理由がありました。
「脱石油政策」の進展によって
石油に対する依存度が大きく低下していることもありますが、
なんといっても大きいのは為替レートです。

たとえば1980年代の前半、原油価格は1バレル30ドル前後で推移していましたが、
その当時の為替レートは1ドル200〜250円でした。

それがいまや為替レートは1ドル110円です。
こうなると、1バレル60ドルでも、
円ベースでみた原油価格は1980年当時よりも安いくらいなのです。
だから日本ではいまの原油高に危機感をもつことができないのです。

しかし中国やインドが原油を大量消費し始めたいま、
原油価格が1バレル100ドル時代がくるという専門家もいます。
のうのうとしてばかりはいられません。

07月06日(水)

【なおし屋又兵衛】

道路公団の橋梁建設をめぐる談合問題に対する
世間の反応はいまひとつピリっとしない。
正直、またか、というのが多くの人たちの感想なのだろう。
もはや本気で怒ることすらできなくなってしまったのかもしれません。

談合はこれまでにも何度もあったし、
これからもずっとなくならずに続いていく。
運の悪い連中だけが事件化され、逮捕されるだけで、
談合は永遠になくならないと多くの日本人はあきらめているのです。

実際、建設関係者の圧倒的多数は「談合」の必要性を信じきっています。
「談合がなければ、過剰な価格競争が起こり、工事の品質が劣化するだけだ」
あるいは「赤字受注があいつぎ業界全体が沈没にむかう」といった、
「できない理由」を列挙するのが関の山です。

だから建設業界は尊敬されないのです。

しかし、世の中の建設会社がすべて自助努力を放棄し、
談合だけで生き残りをはかっているのかといえば、
そんなことはありません。

一例をあげましょう。
前田建設という準大手ゼネコンが始めた「なおし屋又兵衛」は、
ダム建設を得意とする同社がはじめたリテールビジネスです。

大規模な公共事業ではなく、
ちょっとした窓やドアの修繕などを手がける修理ビジネスを
全国規模のネットワークを作りながら行っているのです。
新しいビジネスモデルを創り出そうという試みいがいの
なにものでもありません。

これがビジネスというものです。
既存のビジネスモデルはいずれかならず限界点を迎えます。
その先に成長を求めるためには、
新しいモデルの構築が避けて通れません。
談合はその努力の回避いがいの何ものでもありません。

「なおし屋又兵衛」
いいじゃないですか。
いつか詳しくレポートしたいと思っています。

07月01日(金)

【ダイエーの再建なるか】

今日は朝日放送の情報番組『ムーブ』に出演するために大阪にきています。
番組内でダイエーをとりあげることになっています。

傷だらけの巨像が倒れるようにして産業再生機構入りしたダイエーが、
新しい経営者を迎えてこれからどうなっていくのか、
そんなところまで話す予定です。

これは私の持論ですが、企業の再生には、
それまでの古い企業文化を根こそぎぶち壊すことが不可避です。
再生が可能かいなかは、ひとえにその一点にかかっていると言ってもいいと思います。

幸い、新生ダイエーの経営者は流通業界とは無縁の世界からやってきました。

この点はすばらしい。

ただし、再生機構は大きな間違いをおかしました。
すばらしい経営者を二人も送り込んでしまったのです。

元BMW東京社長の林文子さんをダイエーの会長に、
そして日本ヒューレットパッカードの社長だった樋口泰行さんを
ダイエーの社長にすえたのです。

船頭を2人にして役割分担をはかるというやり方は、
いかがなものでしょうか。

私は賛成しかねます。

スーパーマーケットという古いビジネスモデルから脱却するためにも、
負け癖のついたダイエーの企業文化は
ねこそぎ変えなければなりません。

そのためには強力な求心力が必要です。
そこに2人の有能な経営陣を並立させることは、
どう考えてもいいとは思えない。

しかし、それでスタートをきってしまった以上、
もうやるしかありません。
見事ダイエーを再生させてほしいものです。

06月27日(月)

【借金時計】

Yahooニュースのトッピックスに「国の借金、1人当たり612万円」
というニュースが6月24日にでました。

ありがたいことに、この記事が当サイトの
「日本の借金時計」をリンクしてくれたのです。

そのおかげで、多くのみなさんが
「日本の借金時計」を見に来てくれたのですが、
大変申し訳ないことに、サイトが対応不能状態に陥ってしまいました。

わが社のサイトを、容量をはるかにオーバーする
アクセスがあったためです。ごめんなさい。

集中豪雨的アクセスが過ぎ去ったあとで、
またあらためてご覧いただけたら幸いです。

06月23日(木)

【中国の自動車市場】

26日のサンデープロジェクトで「中国特集」を
放送する予定です。

北京、上海で反日デモが行われた直後に、
上海―天津―北京と取材にいってきました。
1年間に1000万台以上の自動車を生産している国は
世界に2つしかありません。

米国と日本だけです。

しかし2010年には中国が1000万台プレーヤーの仲間入りをすると、
多くのシンクタンクが予測しています。

もっとも最近では、金融引き締め政策の影響などもあり、
中国の自動車市場はその拡大に急ブレーキがかかってきました。
そのせいか、2010年の中国の自動車生産台数は
900万台程度にとどまるのではないかという
「弱気」な見通しが最近は増えてきました。

ただし「弱気」といっても、文字通り受け止めてもらってはこまります。
中国の自動車生産台数の推移をちょっと見てみましょう。

1990年はたったの47万台でした。
それが2000年には207万台。そして2004年には507万台!
この年、ドイツは556万台で世界第3位の地位を維持しましたが、
早晩、中国に抜かれるでしょう。

いや、ドイツだけではありません。
日本が中国にキャッチアップされるのも時間の問題でしょう。

それにしてもなぜ中国の自動車生産台数は
これほどの勢いで伸びているのでしょうか?
もちろん13億人もの巨大な人口を抱える中国で
間違いなくモータリゼーションが起こっているからなのですが、
中国のモータリゼーションには
他の国とはまったく違う大きな特徴があります。

それは自動車生産の主役が純粋な中国企業ではなく
外国メーカーだということです
(正確には外国メーカーと中国メーカーの合弁会社)。

つまり、中国という巨大な器のなかで、
世界中から一流の自動車メーカーが集まってきて、
壮絶なバトルが繰り広げられているということなのです。

サンデープロジェクトの「中国特集」(6月26日放送予定)では、
このバトルに果敢にいどんでいる日本の
自動車メーカーと部品メーカーをとりあげます。
お時間のある方は、ぜひ、ご覧ください。

日中関係は「靖国参拝の是非」だけで語るものではないことを
実感してほしいものです。

06月17日(金)

【今日は大阪TV出演の日】

今日は大阪のTV出演の日です。
月に2度、朝日放送の『ムーブ!』という番組に出演しています。

しかし考えてみると、今月に入ってから講演会も含めると
大阪に来るのはすでに4度目。
大阪がとても元気になりつつあるのを実感します。

東京、名古屋だけが元気では足りません。
やはり大阪が元気にならないと日本全体の勢いがつきませんよね。

06月10日(金)

【新幹線と焼酎効果】

先日、鹿児島で面白い話を聞きました。
鹿児島の景気はけっこういいそうです。
なぜですか、と地元金融機関の方にたずねてみると、
要因は2つあるそうです。

新幹線効果と焼酎効果。
昨年、九州新幹線が部分開通したことで、
鹿児島駅周辺の人の流れは明らかに増えたとのこと。

新幹線にはストロー効果というものがあり、
新幹線というインフラができたことによって、
魅力的な都市に人が一方的に吸い込まれるため、
新幹線の開通で経済的なメリットを受ける地域と逆に、
新幹線ができたことでさびれてしまう地域とがあるのですが、
幸いにして鹿児島は観光資源にも数多く恵まれている上に、
終着点であることも強みなのでしょう。
大いに沸いていました。

それから焼酎。
下戸の私はあまりわからないのですが、
いま東京では空前の焼酎ブームがおこっていますが、
その背景には地元鹿児島の焼酎メーカーの自助努力があったそうです。

あまりにもイモ臭い焼酎では都会の女性にはうけない。
そこで彼らはイモ臭くない、
しかし美味いイモ焼酎の開発にしのぎを削った結果が
いまの焼酎ブームの原点だと地元では理解されていました。

地方は元気がないといわれるなか
鹿児島はなかなか元気があってよかったですね。

06月09日(木)

【「外資」にも松竹梅】

私はテレビ朝日系の情報番組『サンデープロジェクト』に出演していますが、
年に何度か特集を担当します。

先月は「株価31円いすゞ劇的復活の秘密」と題して、
いすゞ自動車の復活の軌跡を追いかけたドキュメンタリーを
放送しましたが、今月は今の予定でいくと、
私が担当する特集が2本放送される予定です。

緊急の特集などがはいることもあり、
日程は確定ではありませんが、次の日曜日(6月12日)は
旧長銀を買収したことで知られる外資の投資ファンド
「リップルウッド」に関する特集です。

外資系ファンドが日本企業を買収すると聞いただけで、
ナショナリズムを刺激され、
「日本を食い荒らすだけのハゲタカファンドに自由にさせるな」
と怒り心頭に達するひともおられますが、
はっきりいって外資系ファンドにも松竹梅があるのです。

大切なことは事実をしっかりと見ることです。
印象論でものを語るのではなく、
ディテールをしっかりと見つめる作業を通じて、
客観的な評価をする態度が必要なのです。

リップルウッドは松なのか、竹なのか、梅なのか。
ぜひとも番組をご覧になり、判断してほしいものです。

06月07日(火)

【野村證券出身の起業家たち】

最近は大企業をやめて独立、起業する人たちが本当に増えました。
一昔は米国人のような狩猟民族はベンチャー向きだが、
農耕民族の日本人はベンチャーには向かないなどという
愚かな解説が堂々とまかり通っていた時代もありましたが
いまや、さまがわりです。

なかでも野村證券とリクルートは人材輩出会社として有名で、
起業家や転職組には野村とリクルートの出身者が
圧倒的に多いことで知られています。

そんなことを百も承知の私が最近、びっくりすることがありました。

この3月に港区内の新築のビルに事務所を移転したのですが、
私の事務所と同じ8階に野村出身の起業家が2人いることがわかりました。

するとなんと10階にも元野村證券マンがおり、名刺交換をしました。
これだけでも驚きなのですが、
聞けば12階にも元野村證券マンがいるというのです。
そして、何を隠そう、私も野村證券で3年ほどお世話になりました。

野村證券という会社は、一人で生き抜いていく自信を
身につけてくれる会社ということなのでしょうか。

06月01日(水)

【少年サッカー】

内田裕子の「財部ウォッチング」のコーナーで、
私が少年サッカーのコーチをしていた当時の話を紹介
(『思い出のヴェルディ戦』)していますが、
このチームは地域の子供たちを集めた、いわゆる草サッカーチームで、
専属のコーチはおらず、各学年ごとに子供たちの親がコーチをし、
子供たちが小学校を卒業すると同時にお父さんコーチも卒業していくという
ユニークなシステムをとっていました。

私は陸上競技とラグビーの経験はありましたが、サッカーはまったくの素人。
サッカー関連の書籍を山ほど読んで、
毎週末、子供たちいっしょになってチームを作ってきたわけですが、
あの6年間(93年から98年)は私にとっても特別な時間でした。

私も多くのことを学びましたが、なかでもとりわけ大きな収穫は、
子供は一人ひとりまったく違う「時間軸」をもっているということでした。

子供は成長のスピードがまるで違います。
運動神経や学力を単純に横並びで比較することは非常に危険です。
成長の速度が速くて何でもできる子もいれば、成長の速度が遅くて幼い子もいます。

そうした違いを認識した上で、一生懸命に大人が子供を観察してあげれば、
子供たちとも心が通じるものですね。

そんな子供たちといっしょになって作りあげた雑草のようなサッカーチームが
東京都大会で活躍できたことは、
子供たちにとっても、そして私たちコーチにとっても宝ものでした。

そんな彼らもこの4月に高校を卒業しました。
いまどうしているのだろうか。
時々、私の頭をかすめます。

05月27日(金)

【和倉温泉】

今日は仕事で石川県の七尾市に来ています。
能登半島の和倉温泉といった方がわかりやすいかもしれません。

講演会の会場となった加賀屋は全国屈指の名旅館で、
控え室の窓からはゆったりとたゆたう七尾湾が一望できます。
これほどのどかな景色に身を置くのは久しぶりです。
仕事のまえのほんの一瞬でしたが、幸福いっぱいの気分にひたれました。

私は日本中、どこへいっても日帰りが基本なのですが、
和倉温泉の加賀屋さんにだけは、いつか行ってみたいと思っていたので、
予定を変更して、一泊することにしました。

これから一仕事して、
あとはのんびりと波の音を聞きながら温泉にひたるとしましょう。

05月26日(月)

【ついに終わった「不良債権問題」】

昨日、大手銀行・金融7グループの決算が発表されました。

不良債権の残高は7兆6900億円となり、前年とくらべて半減しました。
貸出の総額にしめる不良債権の比率である不良債権比率も
2.2ポイント低下して、2.9%まで下がりました。

これで大手金融グループの不良債権問題は、
もはや過去のものになったといってよいでしょう。
本当に長い道のりでしたが、よく、ここまできたものです。

この点だけは小泉政権をほめてあげなければなりません。

道路公団民営化も郵政民営化も、
小泉政権のやっていることはすべて中途半端な、
「看板」を付け替えるだけの実のない改革ですが、
不良債権処理についてだけは別です。

ここだけは徹底的な取り組みをみせました。

とはいっても、実際に不良債権処理にあたったのは民間銀行自身であり、
そこにはおのずと格差がでました。
結論だけをもうしあげましょう。

みずほフィナンシャルグループは素晴らしかった。

不良債権比率は2.2%と、東京三菱の2.9%を追い越して、
大手銀行でダントツの数字をたたきだしたのです。
その背景にはいろんなドラマがありました。

いつかお伝えしたいものです。

05月25日(水)

【“ルカ・カルトン”三ツ星返上『パリの革命』】

5月22日付の朝日新聞にこんな記事がでていました。
28年間、ミシュランがつける最高のランクである三ツ星を
獲得し続けてきたレストランが、
なんと三ツ星を返上するという。

三ツ星の維持には、料理の味はもちろんだが、
内装やテーブルの配置まで気を配り続けなければならず、
このレストランのオーナーシェフは
「気取るのはもういや」だということになったそうです。

その店の名前を見て、びっくりしました。
ルカ・カルトン!

「えっ、去年行ったレストランじゃないか」
久しぶりに家族全員そろっての旅行となった昨夏のフランスへの旅。
はるばるパリまできたのだから、
一度くらい三ツ星レストランにいってもいいだろうと、
思い切って行ったお店がじつはルカ・カルトンだったのです。

三ツ星を返上すれば、「気取る」ために必要な経費を節約することでき、
料理の値段も半分くらいにできるという。

本当に伝統を誇るお店というのは、
伝統にあぐらをかかないということですね。

05月24日(火)

【「良い合理化」と「悪い合理化」】

「4400人の人が会社を去ったという事実は、生涯、私のなかで消えません。
 死ぬまで引きずっていく。
 いすゞの業績がどれだけ良くなっても、
 一千億円の利益を達成できるようになったとしても、
 私の心から生涯消えませんよ」

いすゞ自動車の井田義則社長の言葉です。

3年前の02年11月、いすゞ自動車の株価はなんと31円まで売られました。
市場からの「死亡宣告」といってもよい株価水準です。
しかし思い切った事業の見直しによっていすゞは劇的な復活をとげました。
04年3月期、05年3月期と2年連続で史上最高利益を
たたき出してしまったのです。

もちろんそこには、ドラスチックな人員の合理化もありました。
1万3千人いた社員の3分の1にあたる4400人が合理化されたのです。

しかし同じ合理化でも、「良い合理化」と「悪い合理化」があります。
「合理化は善だ」と単純に割りきり、
合理化による利益の捻出に対してなんの痛痒も感じない経営者のもとで
行われた合理化は、悲劇を招くだけです。

この点については5月10日付けの『日本のJR西日本化現象を疑え』
で書いたとおりです。

その点、いすゞの合理化は違っていました。
いすゞでは経営トップが人員合理化に対して
深い思いをもってのぞんでいました。
合理化の痛みに対する社長自身の覚悟が違いました。
こうした覚悟があるか、ないかが企業の命運を分けるのです。

とんでもない犠牲を社員に強いた分だけ、
その犠牲を無駄にするわけには絶対にいかないという覚悟です。
数字合わせの単純な利益の捻出と、品質の向上や売上そのものの拡大とは、
まったく違うことです。

ピンチがさらなるピンチを招きこんでしまうか、
それともピンチをチャンスへと昇華できるか。
その命運を分けるものこそ、
合理化に対する社長自身の覚悟だと私は考えています。

05月19日(金)

【『自民党と戦後』(講談社現代新書)】

テレビ朝日の情報番組『サンデープロジェクト』のコメンテーターどうし
という関係でお付き合いさせていただいた朝日新聞社編集委員の星浩さんが、
『自民党と戦後』(講談社現代新書)という本を出版しました。

20年にわたる政治部記者として
自民党を見続けてきた星さんが描いた“自民党物語”です。

「論」ではなく、具体的なエピソードをふんだんにもりこみながら
文章が展開されているから、じつにわかりやすい。
自民党の限界と可能性を考えさせてくれる好著です。

05月18日(水)

【相次ぐ日本航空のトラブル】

今朝、新聞を読んでいたら読売新聞の一面トップに
こんな見出しが躍っていました。

「日航が無認可整備」
日本航空の関連会社が経済産業省の許可を得ないまま
旅客機の整備を請け負っていたことが明らかとなり、
経産省が日本航空の本社に立ち入り検査にはいったというニュースでした。

今年に入ってから日本航空のトラブルがとまりません。
じつは昨日、東京から小松空港にむかう際にも
ちょっとしたトラブルがありました。

搭乗直前に、次のような驚くべきアナウンスが流れたのです。

「ただいまご予約いただいたお客様が座席数を上回っています。
次の便にご変更いただけるお客様はいらっしゃらないでしょうか。
ご変更いただいたお客様には、現金1万円もしくは7500マイルをさしあげます」

要するにオーバーブッキングしてしまったということです。
小さなトラブルかもしれませんが、私の不安は小さくありませんでした。

「予約の管理もできないのか?」
合理化につぐ合理化で黒字復帰を果たしたものの、
次から次へとトラブルが続出する日本航空。

その構造は福知山線の脱線事故をおこしたJR西日本に重なってしまいます。

もちろん日本航空もさまざまな対応策を講じているのでしょう。
また一連のトラブルの責任をとって兼子勲会長は退任を決めました。
それなりの対応はされていると思いますが、
このままでは乗客の不安感はぬぐいきれません。

複雑な労働組合の問題もふくめ、組織のあり方を根本的に見直さないかぎり、
信頼はとりもどせないのではないでしょうか。

05月11日(水)

【中国取材報告 パート3】

北京でのことです。

ある日本企業の中国本社を訪問するために、
外資系企業が多く入居している高層ビルのエレベーターに乗っていた時のことです。
乗り合わせた、30代半ばくらいの中国人ビジネスマンが突然、
私たちに英語で話しかけてきました。

「お前たちは××企業に行くのか?」

彼はわれわれが目指す日本企業の社名をあげて、
われわれが日本人であることを確認したのです。
「そうだ」というと、いきなりこうまくしたてました

「俺たちは日本の歴史認識に怒っている」

その男がそこまで言ったところで目的のフロアーに到着して、
エレベーターの扉が開いてしまったために、
話はそこで中断してしまったのですが、失礼きわまりない態度でしたね。

見ず知らずに外国人をつかまえて、いきなり文句をいいはじめる。
人としていかがなものかと、思いました。
国家間の問題を単純に個人の問題に持ち込んでしまう短絡さ、単純さ。
情報統制された国の怖さを痛感した瞬間でした。

しかしそれが中国人の一般的な態度なのかといったら、
そんなことはありません。
親日の中国人も少なくないし、
日本製品に対する絶大な信頼感はまったくゆらいでいないし、
日本の漫画や音楽などを通じた日本への憧れをいだく若い人たちもいるし、
海外旅行の行き先として日本が人気スポットのひとつであることもまた事実なのです。

実利で割り切るというのが中国人の本質をわすれてはいけません。
日常生活から遊離した学生たちは別として、
一般的に、中国の人はまず実利を優先さます。
日本の歴史認識に怒りを感じることはあっても、だからといって
「日本製品を買わずに中国製品を買おう」という学生たちの呼びかけに
応じる中国人はまずいません。

国は国、自分の生活は自分の生活。それが中国人気質の面白いところです。

ただ、中国のテレビ番組には暗澹とさせられました。
日中戦争時の様子を連日、テレビが放映していたのですが、
しかばね累々の凄惨な光景が延々と流されているのです。
日本のテレビでは絶対に放送されない悲惨な映像です。
あんなものを毎晩、国民に見せつけることで中国政府は何を期待しているのでしょうか。
政府に対する不満を反日感情にすり替えるためにのみ、やっているのでしょうか。

いずれにしても不幸な過去の歴史をこのまま放置しておくわけにはいきません。
日中関係は政冷経熱(両国の政治関係は冷え込んでいるが、経済関係は活発)
といわれて久しいですが、政治においても、
なんとかこの閉塞状況を突破してもらいたいものです。

05月10日(火)

【日本のJR西日本化現象を疑え】

●感情論だけでは本質を見失う

福知山線の脱線事故をめぐって、
JR西日本のお粗末な対応に日本中から怒号が飛び交っています。
事故の直後に、JR西日本は「脱線は置き石による可能性が高い」
といった解説を一方的に展開しました。

事項調査委員会が調査に入っているさなかに、
事業者自らが責任逃れの憶測を語るとは言語道断ですが、
時間の経過とともに驚くべき事実が次から次へと露見しました。

事故車両に乗り合わせていた社員2名が救助活動をせずに出社していたかと思えば、
事故の発生を知りながらボウリング大会をしたり、
ゴルフや宴会に興じたりといった事実が次から次へでてきたのです。
目を覆うばかりの惨状です。

これに対して多くのマスコミが感情むき出しのJR西日本批判を繰り返していますが、
感情論の積み重ねだけでは、問題の本質を見誤る恐れがあります。
事故の直接的、物理的原因は事故調査委員会の解明を待つよりほかありませんが、
107名もの人命が失われるという今回の重大事故をまねいた
JR西日本という企業に対する冷静な考察を忘れてなりません。

マスコミが口をそろえて指摘するのは事故を誘発したのはJR西日本の
「利益優先体質」だということでした。たしかにその通りでしょう。

しかし「利益優先」を全否定するだけでは何も見えてきません。
そもそも株式会社である以上、利益優先は当たり前のことです。
株式会社の目的は利益を追求することなのですから。
問題は、JR西日本はなぜ「安全」を犠牲にしてまで
利益追求に走ったのかということです。

さらにいえば、今回の脱線事故はJR西日本だけの問題だったのか
という視点も重要です。

結論から申し上げておきましょう。
福知山線の凄惨な事故は、日本の企業社会全体が抱え込んだ病理の象徴です。
表現を変えれば「日本経済のJR西日本現象化」
という視点を忘れてはなりません。
それほど、今回の脱線事故は日本全体にとって大きな問題をなげかけているのです。

●利益優先体質は構造的な問題だった

1987年、民営化によって旧国鉄は7つに分割されました。
自力での黒字経営が期待できなかったJR北海道、JR四国、JR九州の
いわゆる3島会社は「経営安定化基金」からの資金援助を得ながらの出発に
なりましたが、JR東日本、JR西日本、JR東海の、いわゆる本州3社については、
自主自立で、国鉄時代の借金返済の義務も負いながらのスタートとなりました。

いまでこそJRの本州3社は「優良企業」として学生人気も高い会社となっていますが、
民営化のスタート時点で、今日の姿を予測した人間は一人もいませんでした。
当時の新聞や雑誌の記事を見れば一目瞭然ですが、
世論の多くは民営化の先行きに大きな不安を募らせていたのです。
黒字どころか、破綻は時間の問題といった論調が大勢をしめていました。
そんな逆風のなかで旧国鉄の民営化はスタートを切ったわけですが、
本州3社のなかでも経営体力には大きな開きがありました。

JR西日本は他のJR東日本やJR東海と比べて経営基盤があきらかに脆弱でした。
首都圏を地盤とするJR東日本は、
山手線や京浜東北線などの国鉄時代の黒字7路線のうちの5路線を保有し、
経営的にはきわめて安定した収入を稼ぎだす環境が整っていました。
また、JR東海はドル箱の東海道新幹線を運営する会社であり、
こちらも収益基盤がしっかりしていました。

ところがJR西日本の場合は、
2府16県にまたがる営業地域の多くが赤字ローカル線となっていたことにくわえ、
勝負どころの大阪が「私鉄王国」と呼ばれるほど競争の激しい地域で、
簡単に収益があがる状況にはありませんでした。
阪急、阪神、南海、近鉄、京阪の私鉄5社との熾烈な競争に勝たない限り、
JR西日本には未来がないという危機感が民営化の時点で、
経営陣の頭を支配していたといってもいいすぎではありませんでした。

幸いにして、JR西日本は、旧国鉄時代に私鉄にさきがけて、
複々線化の工事を終えていたので、
これをテコに列車の高速化や利便性のアップに取り組むと同時に、
徹底的な合理化をすすめていきました。

この方向性は間違っていません。当たり前のことです。
けして強いとはいえない収益基盤のもとで、利益を稼ぎ出し、
黒字を確保し、国鉄時代の借金を返済していくために、
JR西日本はやるべきことをやったというべきです。
少なくとも民営化の精神にのっとった自主自立の経営を行おう
という方向性だけは間違っていませんでした。

その結果、JR西日本はすさまじい利益のかさ上げに成功します。
民営化された87年度、わずか80億円だったJR西日本の経常利益は、
04年度には744億円とじつに9倍まで増加しました。
その間、JR西日本は民営化時に背負った2兆1500億円の借金を半減させ、
04年の借金額は1兆142億円です。

問題は「合理化による利益のかさ上げ」と、
鉄道事業者が絶対にはずしてはならない「安全」という
最重要の使命とを引き換えにしてしまったことです。
度を過ぎた合理化によって安全を犠牲にしてしまったことです。
本州3社の人員が民営化直後から現在にいたるまでに
どのくらい減少したかを比べてみると、
JR西日本の人員合理化がどれほど異常なものであったかがわかります。

民営化時 2004年
JR東日本 8万2469人 7万 280人 (−15%)
JR東 海 2万1400人 2万 187人 (− 6%)
JR西日本 5万1540人 3万2850人 (−36%)

JR西日本では3人に1人が辞めた計算です。
民営化の時点では人員合理化が不十分であり、
その後も継続して人員合理化をせざるをえなかったという事情は
わからなくありません。
しかし、JR東日本とくらべても、西日本のそれは常軌を逸しています。
3人に1人も合理化されているのですから。

もっともこうした傾向はJR西日本固有の問題だったのかといえば、
そうではありません。
コストカットと合理化を絶対的な善だとしてきた日本の企業社会すべてに
通じる問題なのだという認識をもたなければいけません。
この2,3年のあいだに日本を代表する優良企業で考えられないような
事故や不祥事が相次ぎました。

たとえば03年9月には新日鉄の名古屋工場でガスタンクが爆発。
その直後にブリジストンの栃木工場で火災、
さらに続いて出光興産の名古屋製油所でも火災。
04年8月には関西電力美浜原発で事故。
そして今年にはいってから、日本航空でトラブルが続出。

また厚生労働省によれば労災事故で一度に3人以上が死傷した
「重大労災」が04年は274件発生し、1977年以降最悪となりました。
同省は「リストラで安全管理を熟知した担当者がいなくなり、
災害回避の知恵が後輩に伝承されていないことや、
事業所幹部の取り組みが不足している可能性がある」と原因を分析しています。

尼崎の脱線事故の背景には「日本のJR西日本化現象」というべき
恐ろしい姿が浮かび上がってくるのです。

05月09日(月)

【中国取材報告 パート2】

上海の日本人コミュニティは反日で大きな衝撃をうけていました。
1週間前に北京で反日デモが起こっても「北京と上海は違う」
と多くの日本人が思い込んでいたからです。

デモ参加者の多くが上海以外からやってきた人間によって行われたよう
だということは、すでに申し上げましたが、在上海の日本人にしてみれ
ばもっとも先進的な国際都市、上海で領事館が廃墟と化すまで破壊され
た事実そのものが、とてつもなく重たかったのでしょう。

ですから、多くの日本企業が反日デモの直後、
出社時にネクタイをしないようにとか、
次のデモが心配された4月22、23日の週末に外出禁止令をだす
といったことが行われていました。

では北京、上海と続いた反日デモのあとの、治安はどうであったかというと、
こうした日本人コミュニティの心配や日本のマスコミ報道とは裏腹に、
いつとも変わらぬ、落ち着いたものでした。

身の危険を感じるような場面には一度も遭遇しませんでした。

ただし、上海の街ではいくつかの違和感を覚えました。
ワイハイルーと呼ばれる繁華街を歩いていても、
ついに、われわれ以外の日本人に会うことがなかった。
必ずといっていいほど街で見かける日本の観光客やビジネスマンが
ひとっこ一人歩いていなかったのです。

上海の落ち着きはらった表情の裏には、
やはりある種の緊張感がただよっていたのです。
上海事情に精通している日本人駐在員によれば、
反日デモでどのような破壊行為が行われたか、
上海の人々はみな知っているそうです。

日本では反日デモについて中国の報道機関はいっさい伝えていない
ということになっていましたが、
ニュースとして伝えられなくても、
常軌を逸した破壊行為が行われた事実そのものは、
口伝えとメールによって瞬く間に上海市民の間に伝播したそうです。

クルマのオーナーは中国人だったのに、
日本車であるというだけでクルマが徹底的に壊されたという話に、
上海のタクシー運転手たちは恐怖を感じたようです。

ですから、反日デモの翌日、
ある日本人駐在員が道端でタクシーを拾おうとしたとき、
5台のタクシーから乗車拒否をされました。
「一度は止まってくれるのだが、じっと私を見て、日本人だと察知するや
そのまま行ってしまうということが5回もありました」
(大手商社、上海駐在員)

違和感といえば、
日本の領事館を中国の公安(警察)が厳重に警備していた光景もまた異常でした。

前回のレポートでも記したように、領事館はすでに廃墟と化しており、
見るも無残な姿をさらしているというのに、
その廃墟を警察官たちがものものしく取り囲でいる様子には、
とてつもない違和感を覚えました。
これだけ破壊の限りを尽くされた建物の何を守ろうとしているのか
といった気分にもなりました。

そのアンバランスは、国際世論に気圧された中国が、不承ぶしょう、
デモ発生を押さえ込んでいることを象徴しているのではないか、
と私には感じられました。(続く)

05月06日(金)

【中国取材報告 パート1】

痛ましい福知山線の列車事故報道によって、すっかりかき消されてしまった
中国の反日デモの傷跡を見てきました。

4月の22日から29日まで上海、天津、北京をまわってきました。

国内報道と現場とのあいだには、いつもながら、あまりにも温度差がありすぎて 愕然とさせられました。
数万人規模の反日デモが起こり、
その一部が暴徒化し、
日本の領事館に投石がおこなわれたことは周知の事実ですが
破壊のすさまじさは日本の報道からはまったく伝わっていませんでした。

私はこれまでなんどとなく中国取材を行い、
それなりに中国にシンパシーを抱いた人間ですが、その私ですら、
領事館の被害の大きさには日本人として怒りが禁じえませんでした。

廃墟です。

日本の領事館に石やレンガやインク瓶を投げつけられている様子は
テレビでもなんどとなく伝えられましたが、
いったいどれだけの量の投石がおこなわれたのか。
領事館は完全に廃墟と化していました。

これを見て、憤りを感じない日本人はいないと思います。
一昔前なら、戦争になっていたかもしれないとさえ、思わせるほどの惨状なのです。
これほどの投石行為が目の前で行われながら、
中国の警察はそれを放置していたわけですから、
一連の反日デモが「官製デモ」だといわれるのも当然の結果でしょう。

上海で興味深い話を聞きました。
「上海の反日デモには上海人はほんの少数しか参加していなかった。
大半は外地人だ。デモの参加者は誰も上海語を話していなかった」というのです。
またデモ参加者にはミネラルウォーターまで配られていました。
いったい誰がそのコストを負担したのでしょうか。

上海では今回のデモを組織したのは「共産党青年団(共青団)ではないか」
という人がいました。

その真偽はわかりませんが、中国の留学経験をもち、
ビジネスマンとしての大半の人生を中国ですごしてきた彼のネットワークから
得られた推測には、説得力がありました。
事実、彼は4月23日の時点で「反日デモはもうない」と断言していました。

上海の日本人コミュニティでは、反日デモを警戒するあまり、
日本人社員に外出禁止令をだしていたし、
日中戦争のメモリアルデーである5月1日、5月4日のデモは避けられない
としていましたが、
この人物は共青団の知人から聞いた話として「デモはもうない」と断言しており、
事実、その通りとなりました。

もちろんこれひとつをとって
反日デモが共青団によるものだと短絡的に受け止めるわけにはいきませんが、
今回の反日デモは自然発生的に起こったというよりも、
官製デモだったとの疑念は深まるばかりです。

それにしても中国の予想を裏切ったのは、
デモ問題が日中の2国間問題で処理できなくなってしまったことでしょう。

外国メディアによる大量の中国批判が巻き起こるという予想外の事態に直面して、
中国の態度は豹変しました。

国際世論に巻き込まれた中国当局にしてみれば、
デモは押さえ込むいがいに選択肢がなくなってしまったのです。

03月30日(水)

【どっちもどっちでしたね】

「企業は株主のものというあまりにも単純な議論の横行に少し嫌気がさしている。
たしかにその通りだが『企業は株主だけのもの』といわんばかりの論調が
大手を振るっている姿には強い違和感を覚える。あまりにも空理空論だからである」

そんな書き出しの原稿をサンケイ新聞の『正論』に寄稿しました。

株主にも松竹梅があるのです。
株を買い占め、それを会社に高値で買い取れとせまってくるような
悪意に満ちた株主もいるし、
儲かればいいというだけの通りすがりの株主もいわるわけで、
商法の規定だけで社会がなりたっているわけではありません。

もちろん悪意に満ちていようが、通りすがりであろうが、
株主は株主ですから、株主としての権利を主張するのは当然ですが、
企業は株主だけのものであるかのような
一面的な見方がひろがることには危機感を覚えます。

私はこれまで株式市場でレッドカードを突きつけられた企業が、
劇的に復活した例をなんどとなく取材してきました。
03年度に史上最高利益をたたきだしたいすゞ自動車は
02年11月には株価が31円まで売られました。
阪神大震災で致命的な打撃をこうむり、
その後ゴーンショックと呼ばれる鉄鋼の値下げ競争に巻き込まれた神戸製鋼も
02年に47円まで売り込まれましたが、
その後、復活して04年度決算で史上最高利益が出ると予想されています。

どちらも血のにじむような経営者と従業員の努力があったことは
いうまでもありません。
少なくとも彼らには「自分たちの会社は絶対につぶしてならない」という
強烈な意識がありました。それが現実です。

また今回のニッポン放送株争奪戦のなかで
「買収されたくなかったら上場などするな」
といったお粗末な意見も少なくありませんでした。
これは想像力の欠如といわざるをない。

ベンチャー経営者の多くは、素晴らしい技術やノウハウをもちながら、
資金が充分に調達できないばかりにどれだけ苦しみもがいているでしょうか。
画期的な技術を持っていてもそれを量産するためには生産設備が不可欠ですが、
海のものとも山のものとも知れない製品を作るための工場建設に
お金を融通してくれる銀行などめったにあるものではありません。

その役割を果たしてくれるのがベンチャー・キャピタルですが、
彼らは上場を前提に資金を融通してくれるのです。
投資したベンチャー企業の株が上場すれば、大きな利益をあげることができます。
だから発展途上の企業に投資をすることができるのです。
そんな現実も知らずに「買収されたくなかったら上場するな」などといったら、
ベンチャー育成などありえなし、資本市場も必要なしといっているようなものもで、
議論としてレベルが低すぎます。

正直言って、今回のライブドアVSフジテレビの攻防は二流同士の争いで、
これだけをみて一般論に置き換えることはあまりにも危ない。
本来企業買収というものは、買収先の経営者や社員たちの理解を得ながら
交渉を進めていくのが合理的な態度です。
それを「調査報道はいらない」「テレビは消える」などといった傲慢な発言をすることで、
フジサイドに強烈な反発を招いたライブドアの手法はどうみても二流です。

だが防戦を迫られたニッポン放送、フジテレビサイドの対応は
それに輪をかけてひどかった。
事実上の子会社であるニッポン放送が形の上では
フジテレビの親会社になっていたという資本のネジレ現象が、
こうした買収劇を生み出した元凶です。
さらに、一般株主の利益を完全に無視した
大量の新株予約権を発行しようとした発想も陳腐でした。
かててくわえて、ニッポン放送やフジテレビのトップが語る
堀江貴文社長への感情的な発言の数々も、あまりに大人気なかった。

ようするにどっちもどっち。
レベルの低い争いなのです。

ところが国民の関心が高いものですから、
そこで演じられることがすべてなにかの真理を象徴しているかのごとく
報道されてしまったことに問題があると思います。
ニッポン放送株争奪戦はソフトバンク・インベストメントの登場によって
新たな局面を迎えています。
その行方に多くのみなさんがなみなみならぬ関心をお持ちだと思います。
しかし、この問題をとりあげるマスコミ報道のすべてが真実であるはずがなく、
興味本位であおりたてる輩もすくなくありません。

報道そのものを楽しみつつも、
常識と良識で、愚かな解説に振り回されないでほしいものです。

03月04日(金)

【ご心配をおかけしているようですが・・】

「最近、テレビにでていないじゃないか?」
「朝の番組はどうしたの?」
そんな御心配をいろんな方からいただきました。

じつは昨秋くらいから体調がいまひとつという状況が続き、
2年ほど出演していたテレビ朝日系の情報番組『やじうまプラス』を
12月いっぱいで降りさせていただきました。
早朝6時から8時までの番組ですから、
4時には起床し、5時にはスタジオ入りしなければなりません。
取材や講演活動等で日常的に移動の多い私にとって、
週に1度の4時起きは、体調管理を非常に難しいものにさせました。

『やじうまプラス』では過激な発言などもあり
視聴者の方からお叱りをうけることもありましたが、
私自身もとても好きな番組で、新聞の紙面をどう読んだらいいのか、
私なりに工夫しながら伝えたいと努力してきたつもりですが、
ちょっと身体がついてこなかったというのが正直なところです。

現在は『サンデープロジェクト』と
大阪朝日放送の『ムーブ』という番組に出演しています。
講演会も変わらず、声をかけてもらっていて、
全国に出かけています。
夏前に出す予定の単行本も執筆中です。

体調も随分、良くなってきまして、
楽しく仕事をさせてもらっています。
御心配、ありがとうございます。

できる限り、現場を見て、現場の声を聞きながら、
情報発信をしていこうという姿勢は今後も変わらずにやっていきます。
引き続き、よろしくお願いします。

02月25日(金)

【ライブドアについて】

ライブドアとフジテレビによるニッポン放送株争奪戦は、
目まぐるしく状況が変化しており、関心はあるのだが、
わけがわからなくなってしまったという方も少なくないでしょう。

事実、今回の買収劇では証券の専門用語が飛び交い、そこに法律問題がからみ、
さらには株式市場そのものに対する知識や理解がないと、
解説をされてもおいそれとはわかりません。
同じライブドアによる買収案件でも、
近鉄バッファローズの時とは明らかに事情が複雑です

その複雑さをさらに助長しているのが、
堀江貴文という人物のキャラクターの特異性です。

熱狂的にライブドアを支持する人たちがいる一方で、
生理的に嫌いだと猛反発する人たちもいます。
旧体制にどっぷりつかった古い世代と
それを壊そうとする若い世代との世代間闘争とみることもできますが、
はっきりいってこれはもう「好み」の問題でしょう。

堀江氏が好きだという人たちは、彼を改革の旗手と認識して、彼の行動のすべてを是認します。
逆に堀江氏を鼻持ちならない若造だと受け止める人たちにすれば、
彼が口にする片言節句のすべてが気に入らないということになってしまいます。

金融の専門用語が飛び交うマターに、
感情的な論評がおおいかぶさってくるものですから、
マスコミが伝える情報の断片を漫然と眺めているだけでは、
訳がわからなくなってしまうのもいたしかたありません。

しかし今回のニッポン放送株争奪戦の本質は単純明快です。
これはどこからみても「純粋なマネーゲーム」です。

堀江社長はさまざまなメディアに登場しながら
「提携だ」「インターネットと放送の融合だ」と繰り返し語ってきました。
それがすべて口からでまかせの嘘だというつもりはもうとうありませんが、
彼がとってきた行動を冷静に、客観的に振り返ってみれば、
それはもうマネーゲーム以上でもなければ、以下でもない。

ライブドアの資金調達を支援している米国の投資銀行、
リーマン・ブラザースがもっているノウハウを
最大限に活用したマネーゲームいがいのなにものでもありません。

堀江氏はさかんに「提携によるシナジー効果」を口にしますが、
抽象論の繰り返しばかりで、具体論がまったく見えない。

800億円もの資金を投入するというのに、です。

説得のある具体的なプランがまるで見えてこないとなると、
「提携」によってシナジー効果を求めるといってきた
買収の目的そのものが怪しく思えてしまいます。
結局、買収の主たる目的は「提携」などではなく、
もっとほかのところにあったのではないか。
ニッポン放送株をTOBで子会社化しようとしていたフジテレビの機先を制して
同社株を大量に買い集め、それをフジテレビに高値で買とらせることによって
利益をあげることだったのかもしれません。

それが違うというなら、
800億円という巨額の資金調達を行うリスクをおかしてまで目指している
「提携」の中身、素晴らしいプランの片鱗くらい披露してもよさそうなものです。
少なくとも、フジテレビをうならせるプランがなければおかしいでしょう。
堀江貴文という人物は、たまたまIT長者になってしまった無能な人間でしょうか?
そんなことはないでしょう。
あの若さでここまで大きな仕事をやってのける才覚を持っているのですから、
彼が本気でフジテレビとの「提携」を唯一の目的として、
800億円の資金調達をしたのであれば、
それはもうピカピカの提携構想が出来上がっていると考えるのが
自然ではないでしょうか。

それがない。

少なくとも、これまで彼がマスコミに語ってきたおびただしいほどの言葉のなかに、
それらしきものは皆無でした。

これはおかしい。

堀江氏はこの疑問に答えなければいけません。そうでなければ、
ライブドアの本当の目的は「提携」などではなく
「単なる錬金術だった」とのそしりを免れません。

もちろん、錬金術のターゲットにされたフジテレビにも問題はあります。
規模の小さなニッポン放送がフジテレビの親会社になっていたという資本のねじれ。
これこそが問題だったのです。
未上場企業のコクドが隠れ蓑となって
上場会社である西武鉄道やプリンスホテルを支配していた問題とも
本質的にはまったく同じ資本構造です。
こうした資本のねじれをかかえる企業を狙い撃ちにする投資行動は今後、
さらに増えていくに違いありません。

マネーゲームのターゲットにされる企業には
ターゲットにされるだけの理由があるということです。

さてニッポン放送株争奪戦はついに法廷闘争に持ち込まれました。

ニッポン放送が大量の新株をフジテレビに取得させることで、
ニッポン放送をフジテレビの子会社にしてしまおうという
トリッキーな作戦にでてきました。
これが実現すると、ライブドアの持ち株比率は現在の40%から
15〜20%程度へと激減してしまいます。
ライブドアはフジサンケイグループどころか、
ニッポン放送にもたいした影響力をもてなくなり、
800億円がまったく無駄金になりかねません。

堀江氏はいま必死でしょう。

では法廷闘争の行方はどうなるのでしょうか?
そんなことは裁判官のみが知るわけですが、
堀江氏はここでまたとんでもない弁護士を相手にしなければなりません。
ニッポン放送を支えるのは、かつて「総会屋と戦う日本一の弁護士」といわれ、
その後は日本に「コンプライアンス」の概念を広めた弁護士で、
当代随一の呼び声高い久保利英明氏です。

ライブドアの先行きは安穏ではありません。

もっとも今回のニッポン放送株問題がどのような決着をみるにせよ、
これは「終わり」ではなく「始まり」です。
資本のねじれ現象という歪みこそが問題で、
それを最高の収益機会だと考えるファンドは今後も後を絶たないでしょう。
次から次へと買収をしかけてくるにちがいありません。
手法のよしあしはあるでしょうが、
その行為はある種の「浄化作用」だといってもいいのではないでしょうか。

02月09日(水)

【西川辞任報道のウソ】

読売新聞の大スクープとして報じられた三井住友銀行の西川善文頭取の辞任報道は
まったく根も葉もないデタラメ報道でした。

その直後に、共同通信が打った続報でその配給を受けた新聞各社は、
一斉にデタラメ報道を拡散してしまったことを知ったということです。

トップ人事の情報にもかかわらず新聞記者は誰一人として、
西川頭取に辞任に関する意志を、確かめてもいませんでした。
当然、三井住友銀行広報部への確認すらなかった。

でも、中身が中身ですから読売新聞も何の根拠もなしに報道したとは思えません。
煎じ詰めると、三井住友銀行の内紛にマスコミを利用したということでしょう。

アンチ西川の行内勢力がニセ情報を捏造して、マスコミにそれを流し、
外部から西川氏を追いこもうという「権力闘争」だったというのがおおよその実態です。

西川頭取は、いうまでもなく三井住友銀行の立役者です。
しかし、いろいろ批判される点もあります。
私自身も、ダイエー処理をめぐる西川発言の中には、
銀行家としてのモラルを逸脱するところも感じ、
何もかもがいいとは思っていません。

しかし、個別問題をひとつひとつあげつらって全体の評価を忘れてしまうというのは
これも正しいことではありません。

前回の「金融不安は終った」という原稿は内容的にはなんの変更はありません。
しかし、西川氏の退任と言う部分は私自身も、デタラメ報道に乗せられてしまい、
読者の皆さんに誤解を与える結果となってしまいました。

素直にお詫びをしたいと思います。
ごめんなさい。

02月05日(土)

【金融危機は過去のものとなりました】

三井住友銀行の西川善文頭取が6月までに退任することが明らかになりました

05年3月期決算で不良債権処理に決着をついたから、ということのようですが、
たしかにこの3月でバブル崩壊後、
延々と続いた金融危機に終止符がうたれることは間違いありません。

まだあまり認識されていませんが、
メガバンクのなかで財務内容がもっともよい銀行は
みずほフィナンシャルだという事実をみなさんはご存知ですか? 

不良債権比率でみずほは三菱東京を逆転してしまったのです。
問題山積だったUFJも三菱東京と一緒になります。
これでメガバンクの不良債権問題は完全に決着がつきました。

この4月からペイオフが完全実施されるというのに、
世の中全体がこんなに静かな理由もまたそこにあります。
たしかに地方銀行や信用金庫や信用組合などの地域金融機関のなかには、
財務内容に問題をかかえたところがあり、
なにしかし、それはあくまでも個別金融機関の問題にすぎません。
金融危機とはまったく関係のない話です。
金融危機とは金融システム全体が揺らぐことだからです。

だからメガバンクの経営危機は本当に危ない話でした。
メガバンクがこければ、金融システム全体がこけてしまうからです。
しかし、メガバンクの不良債権問題は名実ともに過去のものとなりました。
それは日本の金融危機が完全に去ったということを意味します。
地域金融機関が破綻をすれば、
その地域の経済や取引先がダメージをこうむるのは避けられません。
しかし、それはあくまでも地域限定のリスクにすぎず、
金融システム全体の問題にはもはやなりえないのです。

不良債権問題に決着がついたことを理由に、
三井住友銀行の西川頭取が勇退するというニュースは、
大きな時代の節目を感じさせます。

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