TAKARABE
JOURNAL本質を捉える視点

2024年 日本経済は悪くない

🔴newsは上書き

例年のことですが、昨年も12月になると2024年の予測記事のオンパレードになりました。しかし私はこの手の記事を参考程度に目を通しますが、自分自身で予測記事を書くことは絶対にしません。理由は明快です。年末年始の休みを挟んで年が改まると、世の中の雰囲気がガラリと変わることがしばしばあるからです。

いったい誰が2024年の元旦に、能登半島が大地震で壊滅的被害に見舞われることを予想したでしょうか。

2日には羽田空港の滑走路上で日本航空516便が衝突

炎上事故。衝突した機体は被災現場、能登へ向かう海上保安庁の小型機でした。これまたあり得ない事故が起こってしまいました。

こうなると報道はこの二つの悲劇しか扱わなくなります。ニュースは英語表記すればnews。「new=新しい」の複数形です。次々に起こる新しい事件・事故を上書きし、過去を忘却していくのが報道の構造的な特性とはいえ、もはやガザの悲劇もロシアのウクライナ侵攻も忘却の彼方です。

「今年はいったいどんな年になってしまうのか」

誰もが不吉な予感に意気消沈したのではないでしょうか。昨年末に発行された『東洋経済』や『エコノミスト』『ダイヤモンド』等々の2024年の経済特集は明るさに満ち溢れていましたが、正月早々、出鼻をくじ

かれました。それを象徴したのが15日に開かれた財界の新年祝賀会です。経団連、経済同友会、商工会議所の経済三団体のメンバーが一堂に会す恒例のイベントはテレビのニュース番組も正月の年中行事として、お祝いムードたっぷりに前向きな雰囲気で報道されるものですが、今年は勝手が違っていました。祝賀ムードを自粛し、地震被災地への支援一色となりました。

「経団連と日本商工会議所、それに経済同友会の経済3団体のことしの新年祝賀会は(中略)名称から『祝賀』を取って『新年会』に変更し、都内で開かれました。会場では3団体のトップが『金びょうぶ』の前で出席者らを出迎えるのが恒例でしたが、今年は『金びょうぶ』は取り除かれ、会の冒頭、出席者らは地震や事故で亡くなった人たちに黙とうをささげました。また、会場ではアルコールの提供もとりやめとなり、乾杯の発声も行われませんでした。経団連の十倉会長は、あいさつで『すでにさまざまな企業が物資の供給やインフラの復旧、生活サービスの維持、生活復旧支援などに取り組んでいる。経済界は引き続き、被災地の皆さまに寄り添った支援を行っていく』と述べました。経団連では会員企業に対して寄付や物資などの提供を呼びかけています。また、日本商工会議所も被災した地域の商工会議所で中小企業や小規模事業者の資金繰りなどの相談に応じる窓口の設置をサポートするなど、経済界でも支援の動きが進んでいます」1月5日付NHK配信記事)

15日ですから、こうした対応になることはやむを得ません。同じ経済団体の新年会でも110日に名古屋で開かれた中部財界の賀詞交換会はまったく様相が異なっていました。例年以上に前向きで中部経済を力強く押し上げようという気概に満ちた賀詞交歓会になったそうです。

🔴 物価高に負けない賃上げ継続への気概

「東京の経済3団体の賀詞交換会ではアルコールも提供されなかったそうですが、名古屋ではおよそ600人の出席者全員がビールで乾杯しました。料理も含めてフルスペックの新年会になりました」

そう語るのは“Pasco”ブランドで知られる敷島製パンの盛田淳夫社長です。中部経済同友会の元代表幹事でもあります。

「被災された方々への支援の決意とともに、デフレ経済正常化にかける今年の思いの強さが溢れた新年賀詞交歓会でした」

中部財界は自粛ムード一辺倒にならず、デフレ脱却への強い決意が横溢していたのは、震災からの時間経過が長かったせいでしょう。震災支援に関して言えば、敷島製パンの被災地に対する支援は迅速そのものでした。地震発生の翌日、12日には通常配送分として物流拠点にあった製品を石川県の支援拠点に運び、3日以降は支援分を増産して対応したそうです。被災地に届けられるパンの種類は菓子パンです。

避難所では包装袋を開ければそのまま口に入れられる菓子パンが一番喜ばれます。パンの緊急搬送はまさに命をつなぐ最優先支援ですが、こうした迅速な対応は阪神淡路、東日本大震災、熊本地震等々の震災支援の経験を積み重ねてきた結果として出来上がった仕組みです。

地震発生と同時に、農水省から大手製パン会社で構成される日本パン工業界に対して緊急支援が要請され、そこから大手製パン各社に具体的な支援要請がな

されます。しかし現実にはそうした国からの要請以前に、震災発生と同時に現場は自主的に動き出すそうです。

「経営トップが指示をだす以前に、被災地に近い工場が増産計画や物流の確保に向けて動きだします。物流もグループ内の物流子会社もあれば外注先もある。震災対応は現場力がものをいう世界です。当社はコンビ

ニエンスストアにパンを供給している関係で工場は年中無休で稼働していますから、即座に対応可能なのです」

つまり敷島製パンはどの企業よりも早く能登に食糧支援をしており被災者に寄りそっている企業なのですが、その経営トップが1月10日の中部財界の新春賀詞交歓会は極めて前向きな雰囲気に溢れていたという話をしていました。

「賃上げについても政府が言うからやろうというのではなく、経済界自ら積極的に取り組んで日本経済を押し上げようという気概に満ち溢れていましたね。わが社は昨年5.1%の賃上げを実施しましたが、今年も継続して引き上げることになると思います。まだまだ原材料の価格高騰が製品値上げに追いついておらず、決して楽なわけではありませんが、経営者としてここは踏ん張りどころだと認識しています。また賃上げも今年で終わりではなく、継続的に続けていくことが企業発展のベースになると考えています」

財界の新春賀詞交換会の雰囲気でも5日に行われた東京と、10日に行われた中部では全く雰囲気が違っています。これは大変重要なポイントではないかと思います。私たちは何気なく。自分たちが情報過多の時代を生きていると誤解をしています。事実はその逆。少なくとも日本語環境は情報過疎です。新聞もテレビをSNSまでもが申し合わせたように同じトピックばかり

を集中的に伝えます。それは小さな日本の中の、さらにごく一部の現象に過ぎないのに、日本人はそれが世界のすべてだと情緒的に受け止めてしまう。その恐ろしさに気づかなければいけません。たえず広い視野で客観的な事実を見続けなくてはいけません。

日本経済にとって2024年は極めて良い年になると考えています。失われたデフレの30年と決別し、日本経済はようやく正常化のプロセスを歩み始めると思っています。それを象徴するのは株価です。14日の大発会で日経平均は33,193円で始まりましたが、112日の終値は35,819円。じつに34年ぶりに35,000円を突破しました。わずか10営業日で日経平均は2,200円以上も値上がりしたのです。

さらなる好材料は円安の元凶である米国の政策金利に打ち止め感が出てきたことです。円ドルレートが日本経済にとっては極めて心地の良い1ドル130円台で推移する日も遠からずやってくるのではないでしょうか。

もちろん単純な楽観論を言うつもりはありません。

自民党の裏金問題に端を発した政治不振は簡単に収まる話ではなく、通常国会は大荒れとなり年度内の予算成立も危ぶまれます。能登半島地震の復興需要によって人手不足問題はさらに深刻化するでしょう。リスクを数え上げたらキリがありません。

しかし今年の春闘はデフレ脱却できるかどうかの剣が峰です。物価高に負けない賃上げの実施ができるかどうか。

「賃金が上がり、物価も上がっていく」経済の好循環を作り出せるかどうか。この一点にかかっています。政府の経済対策は不可欠ですが、ここから先は財界の連帯力です。大企業の正社員だけではなく中小企業や非正規社員にも賃上げの流れが広がらなければ、経済の好循環など生まれません。消費者にも値上げに対する理解が求められます。値上げ=悪という思い込みからの脱却が必要でしょう。それは簡単なことではありませんが、すべては物価高に負けない賃上げを継続するのだという経営者の気概にかかっています。それこそが2024年最大のテーマです。

🟢HARVEYROAD WEEKLY1315号より転載