未曾有の不況のなかで「借金時計」が意味すること
こんにちは、財部誠一です。2019 年6 月にオフィシャルホームページのリニューアルに際し、借金時計のデザインも一新しました。
借金時計の始まりは平成9年にまでさかのぼります。それから10 数年の歳月が流れるなか、借金時計に対する賛否の声は時代とともに驚くほど過敏に変化してきました。世の中の空気が「財政再建」に傾けば借金時計への賛意が増えますが、不況になり景気対策として公共投資を求める声が高まると、借金時計などやめてしまえといわんばかりの罵詈雑言を匿名メールで送りつけてくる人たちが急増します。
日本の長期債務は先進国に類を見ない、GDP 比150%という異常な規模にまで膨れ上がっています。返すメドすらたたぬこの借金は、すべて私たちの子孫に付回しされます。現役世代にはこの異常な国家財政に対する責任があるのです。
だからこそ私たちはいま、借金時計を強く意識する必要があると考えます。危機的な財政状況で行う公共投資は、単なる景気浮揚を超え、少子高齢化という恐ろしい人口構造の変化のなかでも、日本の経済成長を可能にする足がかりとなるような意義あるものにしなければいけません。借金時計がそのための小さな担保になればと願うばかりです。
どこからどこまでが日本の借金?
ひとことで「国の借金」といってもじつはけっこう難しいのです。一般的には国の借金というと、過去に発行した「国債」の残高だと考えられていますが、現実はというと、国の借金ツールは国債だけではなく“ 借入金” もあるし、期間の短い債券(「短期国債」と呼ぶ)など、多岐にわたっています。
つまりどこからどこまでを「国の借金」と考えるかといって、そうカンタンではないのです。 そこで、私たちは絶対に間違いがあってはいけないということで、普通国債の発行残高にのみスポットライトを当てることにしました。 「国の借金」=「普通国債の発行残高」であると定義づけして借金時計を創ったということです。 それは正確さをきすという点では大変すぐれているのですが、その分だけ借金の金額が小さくなってしまうという大きな欠陥がありました。
こうした欠陥を修正し、日本の借金の全体像に限りなく近い借金時計にリニューアルしたい
―――― そんな想いから新しい借金時計は生まれました。
名実ともに「日本の借金時計」といえるものとなりました。
「借金時計」の仕組みはどうなっているの?
ここでは借金時計の仕組をできるだけ単純化してお話しします。
表1をご覧ください。
表1:国及び地方の長期債務残高 (令和四年度政府案)
(単位:兆円)
平成20 年度末 (2008 年度末) 実績 |
令和元年度末 (2019年度末) 実績 |
令和2年度末 (2020 年度末) 実績 |
令和3年度末 (2021 年度末) 実績 |
令和4年度末 (2022 年度末) 実績 |
令和5年度末 (2023 年度末) 国:補正後予算、地方:見込み |
令和6年度末 (2024 年度末) 予算 |
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国 | 573(568) | 914(870) | 973(964) | 1030(1010) | 1055(1035) | 1102(1067) | 1136(1092) |
うち普通国債残高 | 546(541) | 874(823) | 947(937) | 1004(984) | 1026(1006) | 1076(1041) | 1105(1061) |
地方 | 197 | 192 | 192 | 193 | 189 | 183 | 179 |
国・地方合計 | 770(765) | 1,093(1,037) | 1,165(1,156) | 1,223(1,203) | 1,244(1,224) | 1,285(1,250) | 1,315(1,270) |
対GDP比 | 151%(150%) | 198%(190%) | 218%(16%) | 224%(221%) | 220%(217%) | 215%(209%) | 214%(206% ) |
財務省HPの「国及び地方の長期債務残高」は→こちらからご覧下さい
(注)
- 1. 表のデータは財務省ホームページより引用
- 2. GDPは、令和4年度までは実績値、令和5年度及び6年度は政府経済見通しによる。
- 3. 東日本大震災からの復興のために実施する施策に必要な財源として発行される復興債(平成23年度は一般会計において、24年度以降は東日本大震災復興特別会計において負担。令和4年度末:5.2兆円、令和5年度末:4.7兆円、令和6年度末:4.7兆円)、基礎年金国庫負担2分の1を実現する財源を調達するための年金特例公債(令和4年度末:2.8兆円、令和5年度末:2.5兆円、令和6年度末:2.3兆円)、GX経済移行債(令和5年度末:2.7兆円、令和6年度:3.3兆円)及び子ども・子育て支援特例公債(令和6年度:0.2兆円)を普通国債残高に含めている。
- 4. 令和2年度末までの( )内の値は翌年度借換のための前倒債発行額を除いた計数。令和3・4年度末の( )内の値は、翌年度借換のための前倒債限度額を除いた計数。
- 5. 交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金については、その償還の負担分に応じて、国と地方に分割して計上している。なお、平成19年度初をもってそれまでの国負担分借入金残高の全額を一般会計に承継したため、平成19年度末以降の同特会の借入金残高は全額地方負担分(令和4年度末で30兆円程度)である。
- 6. 令和4年度末までの( )内の値は翌年度借換のための前倒債発行額を除いた計数。令和5年度末、令和6年度末の( )内の値は、翌年度借換のための前倒債限度額を除いた計数。
- 7. このほか、令和6年度末の財政投融資特別会計国債残高は92兆円。
これは国と地方の長期債務残高をまとめたものです(出所:財務省)。
表1 の数字はすべて兆円を単位とした、とてもおおざっぱなものですが、借金時計の考え方を説明するには都合の良い資料です。
下から二列目(「国と地方合計」)の数字を見てください。
これが国と地方をあわせた長期債務の合計金額です。
令和元年度末に1,093兆円だった長期債務が、令和6年度末には1,315兆円にまで膨れあがっていくことがわかります。
【令和5年3月31日 約1,285兆円 → → → <約30兆円の増加> 令和6年3月31日 約1,315兆円】
1年間で30兆円、日本の借金が増えるということです。
つまり令和5年3月31日を借金時計の起点とし、そこに1,285兆円の数字をインプットします。そして一年後の令和4年3月31日には借金時計のカウンターが1,315兆円になるように時計のスピードを調整するのです。
1年 あたり 約30,000,000,000,000 円
1日 あたり 約82,191,780,821 円
1時間 あたり 約3,424,657,534 円
1分 あたり 約57,077,625 円
1秒 あたり 約951,293 円
こうして算出されたスピードにあわせて時計のカウンターが動くようにプログラムすれば借金時計のできあがりというわけです。