TAKARABE
JOURNAL本質を捉える視点

コロナはデータとエビデンスで語れ

「コロナ重症患者の8割を救っている。日本の医療従事者がどれだけ頑張っているか。ECMOnetのデータが物語っている」
血管外科医で北青山Dクリニック院長の阿保義久氏の言葉だ。
人口呼吸器やECMOの治療を受けた重症者の年齢分布と転帰を見ると、その8割が生還している。
重症者の命を救うことにこれほど執念をもっている国が果たしてあるだろうか。日本のコロナの現の壮絶さばかりが報道されるが、見事な実績をあげてもいることがデータからわかる。
阿保氏は東京大学医学部OBの仲間30人ほどと、海外の論文を読みあさっては、共有し、検証し、お互いの臨床の現場感覚も大切にしながら知見を深めてきた。昨年8月の未来投資会議では、安倍前総理にコロナの感染指定を2類(1類相当)から5類へ変更すべきだと直訴もしている。
その阿保氏が注目しているのが、世界の5大医学誌のひとつLancetに投稿された論文だ。フランスの入院全数のデータベースを用いていたコロナとインフルエンザの比較である。
「8万人のコロナ患者、4万5千人の季節性インフルエンザ患者を比較したこの報告(写真参照)によれば、コロナはインフルエンザより重症化が目立つとはいえ、極端な差があるとは言えない」と阿保氏は言う。ようするに、コロナは急激に重症化する怖さはあるものの、このデータを見るとインフルエンザもそれなりに医療負荷をかけていることがわかる。
医療例年、1000万人が感染し、1万人が亡くなるインフルエンザをさばいてきた日本の医療インフラが、36万人ほどのコロナ患者で医療崩壊に陥るのは合理的に考えてもおかしい。なぜそんなおかしなことが起こってしまうのか?元凶はコロナを2類(1類相当)のまま固定し続ける厚労省の判断だ。
阿保氏は言う。
「重症患者が殺到する救急現場で迅速な救命治療が施せない。非合理な医療環境の束縛を解除して、疾患の病原性に応じた適切かつ弾力的な臨床行為を現場が行える環境の提供を早急に整えて欲しい」
国の誤った規制が「医療崩壊」を招いているのである。民間病院の医療ソースがフルに活用できるような規制緩和が必要なのだ。
また自宅に隔離だけして何の薬も投与しないのも異常である。自宅隔離中に亡くなる悲惨な事例があいつでいる。それが社会不安をどれだけ煽っているか、国はわからないのだろうか。
感染初期のアビガンの有効性はわかっている。しかもインフルエンザ治療薬としてはすでに認可済み、大量の在庫もある。なぜアビガンを民間病院に使わせないのか? 開発したのが新参者のフジフイルムだからということも関係しているのか? アビガンをめぐる闇は深い。
しかし本気になればできることはたくさんある。開業医が遠隔診療で既存薬を処方するだけでも事態は一変するだろう。とにもかくにも大切なのはデータとエビデンスである。
1月29日の「タカラベnews &talk」は阿保氏がゲスト。データとエビデンスに基づいた科学的知見からコロナを解き明かす。
BSイレブンよる8:59〜
コロナはデータとエビデンスで語れ