TAKARABE
JOURNAL本質を捉える視点

星野リゾート「現金を掴んで、離すな」

「あなたは今年、旅行に行きますか?」

星野リゾートが6月第1週に2万人を対象にアンケート調査を行った。

その結果は、

「行く」   30%

「行かない」    30%

「迷っている」40%

「迷っている」理由をさらに調査すると、コロナ感染の恐怖ではなく、旅行に行った先に迷惑になるのではないか、という旅先への配慮だった。

そこで星野佳路社長が打ち出したのが、クルマで1〜2時間圏内の近場を観光するマイクロツーリズム。大都市圏からの集客ばかりあてにしていた従来の発想を捨てた。

結果はすぐに出た。

「星のや 京都」の7月の稼働率を見ると、インバウンド需要が蒸発し稼働率が45%ほどに落込むところマイクロツーリズムの需要創出で稼働率を80%近くに戻した。

8月になるとマイクロツーリズム効果は全国的に広がり、中旬には星野リゾートが運営する43施設の4分の3は、稼働率が前年並みに戻ってきたという。

しかし圧巻の回復を支えたのは「コロナ新環境下 基本3大方針」だ。社内の価値観を大転換した。

現金を掴み、離さない

人材を維持し復活に備える

CS・ブランド戦略の優先順位を下げる

「現金を掴み、離さない」には思わず笑ってしまうが「コスト削減しよう」なんて表現の何百倍も心に響く。実際社内では「おまえ、その現金、本当に手放して(使って)いいのか」と、面白おかしくコスト削減ができるようになったという。

凄みを感じさせるのは③だ。

星野リゾートが最も大切してきた「CS(顧客満足)やブランド」の優先順位を下げろというのは、これまでの経営方針とは真逆のメッセージだ。

「危機というのは勝ち戦ではなく、何かを犠牲にしなければ生き残れない」(星野佳路)

只者ではない。

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 BS 11   828  20:59