みずほの「失敗」は三行統合時にすでにビルドインされていたというほかない。統合が決まったとき、私は興銀の西村正雄頭取から直接話を聞いた。「ホールセール(大企業取引)は興銀がにない、リテールは富士銀行と第一勧銀がやる。ヘッドクォーターは興銀だよ」という西村さんからは三行統合の覚悟よりも、都銀二行と一緒になる不本意さが滲んでいた。
こんな調子だから富士銀行と第一勧銀も本気で一つにまとまろうとする力が働くわけがない。そしてみずほ誕生時は、
旧行三人の頭取がCO-CEOに収まった。最悪だ。システム障害はみずほ誕生時の不幸な経緯を象徴する出来事である。
逆に見事な統合を見せたのが三井住友フィナンシャルグループだった。一言でいうなら、統合するすべての事柄に「片寄せ」の原則を徹底した。帳票類からシステムまで、どちらが優れているか徹底的に検証して、中途半端なことは一切やらずに優れている銀行に片寄せした。なかでも、システム統合については、他の統合作業に先んじて、本店外に別室をもうけ、万事遺漏なきをはかった。みずほとはあまりにも対照的である。
みずほのシステム障害はシステムの問題ではなく、企業文化の問題だ。だから簡単には決着がつかない。