DENAやアステリア (東証1部上場)などを起業当初から育てた伝説の ベンチャーキャピタリスト、村口和孝氏がまとめた 資料が手元にあります。
日米中のVC が2020年1月~9月にいくらぐらい国 内のスタートアップに投資をしたか比較したものです。
それによれば米国のVCの国内投資金額はなんと12 兆434円です。コロナ禍にもかかわらず前年同期の 10兆3982億円よりも1兆6452億円も増加しています。
増加率は15・8%です。 では中国はどうでしょうか。同期間に中国のVCが
国内投資をおこなった金額は2兆1211億円。前年比 で 2424億円(12.9%)の増加となっています。米国 とくらべると「12兆円」「2兆円」ですから、なん ともさえない数字です。
※1ドル=107円 1人民元=15.37円で換算
しかし、ひるがえって日本の現状をみると慄然と します。同期間中のVC国内投資金額はたったの1075 億円。前年同期比で525億円の減少。率にして32.9% ものマイナスなのです。ケタハズレに金額が小さい くせに前年の3分の2に縮小しているのです。これで はどうにもなりません。中国は米国の6分の1、日 本は米国の100分の1以下です。これではグローバル に通用するスタートアップなど日本から誕生するは ずがありません。
日本にはいまおカネがジャブジャブに余っていま す。個人金融資産だけでも1900兆円もあるというの に固定化されVC投資には回ってきません。その理由 は多々ありますが、一番大きな要因はVCの多くが金 融機関の子会社で、サラリーマンが投資判断を行っ ていることです。VCとは究極のハイリスクハイリタ ーンなのに、サラリーマンは決まった給料をもら い、投資先が株式公開までこぎつけても巨万の富を 手にすることもできません。逆に投資に失敗しても 自分の腹が痛むわけでもない。ハイリスクハイリタ ーンに一番なじまないのがサラリーマン組織です。 旧来型のプレーヤーがいくらVCを名乗ったところで 発想が旧来型だから行動がともないません。
私はコロナ禍の昨年、相談をうけた経営者には 「今こそチャンス」と積極的にM&Aや新規事業に打 って出てはどうかと勧めてきました。コロナのドン 底こそ投資のチャンスだからです。
ところが米中とは逆に、日本だけが昨年1‐9月の VC国内投資を大きく減らしていた事実こそ、日本が いつまでたっても復活できないことを象徴している のではないでしょうか。世界はもうスタートアップ が成長のメインストリームになりました。そこを変 えていかなければ日本経済に未来はありません。そ の問題意識を菅政権に共有してもらうべく行動します。