TAKARABE
JOURNAL本質を捉える視点

「テナントを1社も倒産させるな」西武に見る日本企業の心意気!

西武HDの後藤高志社長にコロナで壊滅的な打撃を被っているホテル業界について電話インタビューした。プリンスホテルの現状も厳しく、東京芝公園の「ザ・プリンス・ パークタワー東京」の稼働率も従来の90%から15 %に落ち込んでいる。窮余の策として近隣の「東京プリンスホテル」を臨時休館とし、ゲストを「パークタワー東京」に集約している。同様に品川の「ザ・プリンス・さくらタワー東京」を隣接する「グランドプリンスホテル新高輪」に集約している。

これは5月31日までの臨時の措置で、この間、休館するホテルの従業員たちは集約先のホテルの応援にいったり、スキルアップのために研修したりする。つまり雇用は守り抜く。

驚いたのはホテルのテナントへの応援だ。

「うちのテナントは1社も倒産させるな」

後藤氏は社内でこう号令をかけた。テナントは中小規模の企業が多い。財務基盤も強くない。具体的にどんな支援ができるのか。

「テナント料を無料にする。これは当然です。国の雇用調整助成金なども積極的に活用して欲しいが、申請するにも手続きが煩雑でわかりにくい。そこでプリンスホテルが親しく している社会保険労務士にテナント各社向けの説明会を開いてもらい、申請のお手伝いをしています」

 そして今日、西武は「品川プリンスホテル」のイーストタワーを感染軽症者の受け入れ先として東京都に一棟貸しすることを公表した。「品川プリンスホテル」は巨大ホテルでイーストタワー以外にも、メインタワー、アネックスタワー、Nタワーの3棟がある。当然のことだが、東京都に提供するイーストタワーと他の3棟とは完全に隔離され、ゲストも従業員も患者とは一切接点を持たないことは言うまでもない。

129日に政府のチャーター機で武漢からの日本人帰国者第1陣191名を受け入れたのは千葉県勝浦市の「ホテル三日月」だったが、じつはこの時、プリンスホテルも手を挙げていた。受入れ先が成田空港から遠すぎるという理由で採用されなかったが、国難と向き合う覚悟を持った企業だ。

感染拡大防止のため、国内全拠点を原則休業とした東芝もあっぱれだ。手形の不渡り猶予を決めた全銀協の措置も素晴らしい。通常なら不渡り倒産だから、助かる企業は少なくないだろう。政治への文句は死ぬほどあるが、いくら文句を並べたところで事態は1ミリも好転しない。

頼れるのは民の心意気だ!