TAKARABE
JOURNAL本質を捉える視点

日韓 この先にある未来

●フィンランドの歴史問題

隣国どうしの関係は世界中どこにいっても複雑です。長い歴史の中では隣国同士が領土をめぐって激しく争った歴史があるからです。いまや世界が羨む理想的な福祉国家を実現している北欧でも隣国同士の争いの記憶が今でも厳然とあります。

フィンランドに取材に行った時のことです。日本語が堪能な現地のコーディネーターと夕食をしました。小林聡美・片桐はいり・もたいまさこ主演の映画「カモメ食堂」(2006年公開)の舞台となったレストランがあるというので、喜び勇んでいってみました。首都ヘルシンキで日本人(小林聡美)がオープンした小さなレストランで繰り広げられる日常の人間模様を描いたほんわかした作品ですが、それがおだやかなフィンランドの国民性と共鳴しながらささやかな日常の幸福を感じさせてくれる秀作です。

 実際にそのレストランに行ってみると、フィンランド人の家族やカップルでお店はいっぱいなのですが、過去にも、またその後も経験したことがないほど店内が静かだったのです。昭和の昔、私たちは「食べる時は話をしない!」と躾けられましたが、そんなはるか昔の記憶が蘇ってしまうほど、みな黙々とカツ丼や和定食を食べていたのです。話すときは周囲に気を配り、小さな声で囁きあうのです。これには本当にびっくりしました。同じ北欧でもデンマーク人が豪快にビールを飲み大声で騒いでいるのとは対照的に、フィンランド人は穏やかです。

我々のテーブルではたまたまサッカーの話題になりました。

ディレクターが日韓戦になると韓国チームは「敵意丸出しのラフプレーばかりするから頭にくる」と言ったのです。

するとフィンランド人のコーディネーターが激しくうなずきながら言いました。

「わかるなあ。フィンランド人もサッカーで一番テンションが上がるのは対ロシア戦だ」

 おだやかなフィンランド人も「冬戦争」の歴史を忘れず、今も対ロシア戦にとんでもなくエキサイトするというのです。

第2次世界戦中の1939年8月23日、ドイツと不可侵条約を結んだソ連は、フィンランドの南に位置するバルト三国(エストニア・ラトビア・リトアニア)に圧力を強め、軍事基地の設置、ソ連軍の駐留などを含む条約を結ばせました。その勢いでソ連はフィンランドに対しても国境線の変更や軍事基地設置、ソ連軍の駐留など強硬に迫りましたが、小国フィンランドはこれを断固拒否。ソ連軍は1939年11月30日にフィンランドに攻め込んだのです。

軍事力で圧倒するソ連はフィンランド軍の3倍もの兵力を送りました。すぐにフィンランドが和平を求めてくるに違いないとソ連は踏んでいたのですが、フィンランドの粘り強い抵抗にあい苦戦を強いられたのです。フィンランドは1940年3月まで戦い抜きましたが、最後はフィンランド第二の都市ヴィープリを含む国土の10%をソ連に譲り渡すという屈辱的な条件の講和条約を締結して停戦にいたったのです。これが「冬戦争」です。

 フィンランド人にとっては忘れることのできない歴史であり、その記憶は若い世代にも受け継がれ、今に至っているのです。

●日韓請求権協定こそすべての基礎

このように第2次世界大戦の記憶としての「歴史問題」は日韓の間だけに存在するわけではありません。

 ただフィンランドと韓国が抱える「歴史問題」は本質的に違います。フィンランドの歴史問題とは「冬戦争」の記憶であり、第2次世界大戦時のソ連による侵略、領土割譲というファクトに基づく明確な記憶です。

しかし韓国が日本に対して主張する歴史問題とは「慰安婦」にしろ「旧朝鮮半島出身労働者(徴用工)」にしろ、明確な事実に基づくものではなく、反日を煽るための政治的小道具として利用されてきた「解釈」に基づいているのです。だから政権が変わるたびに「歴史問題」のニュアンスがコロコロ変わる。

たしかに日本と韓国の関係は複雑です。1910年の韓国併合から太平洋戦争終結の年である1945年まで、日本による統治が35年間続きました。たしかにこれは日本にる植民地化であり、韓国民にとっては民族の自主自立という普遍的な権利の侵害いがいのなにものでもありません。しかし日本の統治はそうデタラメなものではなく、民主的な選挙制度、教育制度、鉄道など社会インフラ整備など、韓国の発展にそれなりの貢献をしてきました。もちろんそれは植民地化した側の論理であり、植民地された側の論理とは違う。そんなことは日本の得手勝手な主張だと猛反発されてもしかたありません。

 いま韓国が問題にしている「慰安婦」「旧朝鮮半島出身労働者(徴用工)」の問題は日本統治の最終局面である太平洋戦争時代の出来事です。これの2つの問題は歴史的事実に照らして韓国の主張は明らかにお門違いです。確かに将校相手の朝鮮人慰安婦がいたことは事実ですが、彼女たちは自ら選択をし、相応の対価を得ていました。もちろん例外もきっとあったと思います。何らかの理由で自らの意志に反して慰安婦とならざるを得なかった人もいるでしょうが、旧日本軍の組織的強制による性奴隷化は間違っています。そのような印象操作を繰り返した朝日新聞が、その事実無根を暴かれて全面謝罪に追い込まれたことは周知のとおりです。また徴用工の象徴として反日デモに参加している韓国の老人にいたっては、自ら進んで働いて相応の対価を得ています。

こうしたファクトに基づかない左翼運動家のようなデタラメな歴史認識を最大限に政治利用しているのが文在寅政権です。側近のスキャンダル隠しなど目的はいろいろ詮索されますが、米国の反感を買ってまでGSOMIA破棄に踏み切ったことは異常としか言いようがありません。“反日親北”だけならともかく、反米国路線をとるとなれば、それは明らかにやりすぎで、韓国軍がクーデターを起こすでしょう。さすがに韓国内でも文在寅政権の支持率は50%を割り込み、『反日種族主義ー大韓民国の危機の根源』という反日のウソを暴いた単行本がベストセラーになるなど、韓国国内でも文在寅の政権運営の危うさが随所に見て取れるようにもなってきました。

しかし今私たちが考えなければいけないことは韓国との過去の清算に対するコンセンサスです。自虐史観に立つ人々は口を開けば日本は「戦争責任を明確にしていない」「反省も謝罪も足りない」と言いますが、そんなことはない。正直言ってキリがない。日韓間で問題が生じるたびに日本政府は誠実に対応してきました。「慰安婦」についても救済のために財団を作り日本政府が基金を提供もしてきましたが、文政権下で勝手に解散、基金は行方知れず。めちゃくちゃだ。

過去の歴史の清算は安倍政権が強く主張している通り1965年の「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」、いわゆる日韓請求権協定をもって完結したと、日本は明確なコンセンサスを作るべきです。実際、この協定にしたがって日本が支払った3億ドルによって韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を実現したのです。ここを日韓のすべての基礎としない限り、未来志向の日韓関係など絶対に描けません。韓国は誰が政権を担っても未来永劫に反日の政治利用を続けるでしょう。反日教育は世代を超えて「恨み」の連鎖を生みます。だからこそ1965年の日韓請求権協定によって過去の歴史のすべてが清算されたのだという一貫した日本の態度が必要なのです。民間企業や個人は自由に韓国と付き合えばいい。だが日本政府はぶれてはならない。それが日韓の未来を創る唯一の道です。

※HARVEYROAD  WEEKLY (NO 1128)を特別転載