いまやバラエティ番組でもAIネタ満載のように空前のAIブームだが、じつはAIブームはこれが初めてではない。1960年代、1980年代に続く第三次AIブームである。AI研究の第一人者である東大の松尾豊教授に2017年に会った折、松尾さんは第3次AIブームに終わらることを心配していた。しかし時代は一変。ChatGPTの登場でAIの大衆化は一気に進んだ。しかし冷静に見ると、ChatGPT、Google、マイクロソフト AIの供給者は米国企業ばかり。
松尾さんは日米の技術格差を「ジェット機と竹槍」とたとえていたが、その差は開くばかりである。
だがLaboroAIの椎橋社長は「ジェット機そのものをつくる必要はない」と言い切る。勝負どころは、既存のAIをどう産業に組み込み、新しい社会モデルや事業の形を生み出せるか。そこに日本の勝ち筋があるという。
製造業や精密加工、ロボットや半導体製造など日本の強みとAIを掛け合わせていけば圧倒的な存在になれると確信している。
ChatGPTのような文字や画像情報の世界で終わらせず“3次元”の現場にAIを落とし込む。新たなビジネスモデルの創造、そしてイノベーションを生み出すまでクライアント企業に伴走する。企業単体にとどまらず産業そのものを革新する存在になるというから目標は壮大だ。だがLaboro.AIは上場企業とはいえ創業2016年のスタートアップで社員は100名。日本の産業を革新するにはまだまだ規模が小さい。だが同社が求めるのはAIテクノロジーに精通した人材だけでなく、相手企業との「橋渡し役」になれるハイブリッド人材を獲得するのは難儀だ。
しかしこの領域ならまだまだ世界と戦える。個別企業ごとの伴走だから割のいい商売ではないが、この領域こそ日本の勝ち筋だという椎橋さんには深く共鳴した。勝ち筋がまったく見えないラピダスに政府は2兆円近い支援をしている。その100分1でもいいからAI実装の分野に国は投資できないものか。愚痴っても仕方ない。1日も早く Laboro.AI に圧倒的な成功事例を産み出し、AI実装を牽引してほしいものだ。
*対談動画は後日アップ