世の中、そう捨てたものではない。大企業は変わらないと決めつけるのは認識がずれている。ホームページで展開しているリレー対談「経営者の輪」は動画で提供しているが、それ以前のテキストの時代から数えるとかれこれ25年以上になる。この間、経営者像も大きく変わってきた。かつては大企業の社長はすべてを操れる全能を装っていた。スタートアップならいざしらず、大企業ともなると、現実的ではない。着地点がどこなのかを明らかにするのがリーダーの役割であることは不変だが、時代が求めるリーダー像が明らかに変わった。
味の素は中期経営計画を廃止した。社長の藤江太郎氏は1年先の世界もわからない時代に5年の中期経営計画策定に膨大な時間と労力をける無駄を、以前から痛感していたからである。
ではどうすればよいのか。藤江氏は海外駐在経験のなかで、数値目標の押し付けではなく「ありたい姿」を現地スタッフと創り上げる延長で数値目標を共有する手法を身につけていた。中国でもインドネシアでもブラジルでも通用したその手法を社長になっても続けている。
藤江氏から紹介されたTDKの齋藤昇社長も全能タイプではない。営業出身でテクノロジーのバックグラウンドを持たぬ自分はTDKの社長ふさわしくないと就任要請を2度断った。それでも最終的に引き受けたのは執行役員の顔触れをあらためて見た時に、外国人も含め、全員と一緒に働いたことに気づいたからだ。「この技術は彼に、この問題は彼女に聞けばスムースにできる。彼らとならチームになれると思えたからだ」とインタビューでも明言している。国際派の若い経営者二人は日本企業が大きく変化しつつあることの証左だ。
TDK斎藤との対談は以下。