TAKARABE
JOURNAL本質を捉える視点

外務省「国営旅行代理店」からの脱却

昔の話で恐縮だが、財務省に取材に行った時のエピソードである。既知の課長のデスク行くと耳を真っ赤にして受話器に向かって叫んでいた。
「テメェは日の丸背負っているのかあ。馬鹿野郎」
そう言うなり電話を叩き切った。温厚な彼にしては極めて珍しく感情丸出しであった。その激しさに部下たちも私も驚くばかり。
「どうしたのか」尋ねたが具体的な内容に触れることはせず、電話の相手が外務省であることだけを明らかにして、こうまくしたてた。
「あいつらは国営旅行代理店だからどうしようもない」
じつは旅行代理店は外務省に対する侮蔑の言葉として霞ヶ関ではよく使われる。最近では「JTB」と言われているらしい。このシーンでは外務省は日本の国益よりも担当国の利益に寄った態度を財務官僚が非難していたのだが、国営旅行代理店はあながち外れていない。
大使館や領事館など在外公館の最大の業務は日本からやってくる国会議員のお世話だ。
世間では松川るい議員らのフランス視察旅行が炎上しているが、松川議員はなんと娘を同伴しており、視察中は娘の面倒をフランス大使館にみさせていたという。30人もの団体旅行を受け入れるだけでも大変なのに、子供の世話までやらされた大使館はさぞかし大変だったに違いない。
フランスやイタリアなど観光大国の大使館は文字通り「旅行代理店」業務が本業と言われても仕方ない。
コロナ禍で国会議員も外遊できなかった期間は大使館にとって極楽だ。人気観光国の大使館員たちは暇を持て余していた。
要するに足下の松川議員らの「視察付き観光旅行」は珍しくもなんでもないのいうことだ。昔から繰り返し行われたきたことで、そんな連中のお世話が在外公館の主要業務になっているのだ。
つまり国会議員の外遊は大使館の便宜供与の上になりたっている。
この際国会議員の外遊については「視察」と「観光」を明確に分けて申告義務を課すべきだ。大使館のサポート業務は「視察」に限定。「観光」にはノータッチとルール決めすれば良い。そうすれば外務省も国営旅行代理店の汚名を少しは返上できるかもしれない。もちろ費用も「観光」については全額、議員の自費にすれば良い。