TAKARABE
JOURNAL本質を捉える視点

「常に現場を科学する」研究開発型農業カンパニー

若い起業家たち農業参入で日本の農業の景色も随分変わってきた。古い農家は作物を作ることだけに特化して出荷はすべて農協まかせでやってきた。ところが起業家の多くは生産、加工、販売と農業のサプライチェーン全体でビジネスを展開して生産性を高めている。あるいは生産には関わらず、販路の多様化で農家を助けるようなビジネスモデルもある。
そんな中で一際目を引く存在が三重県津市にある。浅井農園だ。

「常に現場を科学する」研究開発型の農業カンパニー

浅井農園が掲げるミッションを見るだけでその特異性が伝わってくるだろう。
浅井農園の歴史は古い。社長の浅井雄一郎さんが農園を継いだのは2008年。創業101年の時だった。浅井農園はサツキツツジの生産で名の知れた植木農園だったが、時流に取り残され、雄一郎さんが東京から戻ってきた時には、浅井農園はすでに債務超過状態に陥っていた
彼は100年続いた植木に見切りをつけ、ミニトマト栽培に切り替えた。悪戦苦闘の末たどり着いたのが「科学」を中核にすえた新しいトマト栽培だった。甘いトマト、皮の薄いトマト、子供の成長を後押しするかもトマトなど、品種改良のチカラもつけた。圧巻は全自動ロボットで収穫するためにぶどうの房のように実をつける品種を作ったことである。遠隔操作で全国7ヵ所のトマト農園の生産管理もしている。
それらを可能にしているのが農業の現場を科学する浅井農園のアグノロミスト(農学士)たちだ。
「農業に“科学”という言葉を持ち込んだとたん、日本全国ところか海外からもアグノロミストたちが集まってきた」と浅井さんは言う。
ジェンダーも国籍も問わない正真正銘の多様性が浅井農園の原動力だ。浅井農園は今、新しい挑戦を始めた。キウイの大規模栽培である。トマトはハウス栽培だが、キウイは路地だ。まったく違う新分野に科学で挑んでいる。この秋には浅井農園初のキウイが収穫を迎える。キウイの大規模生産に成功の先に浅井が見据える未来がじつに頼もしい。
「農業を輸出産業にする」
アグノロミスト集団を率いる人間でなければいえない一言である。
浅井雄一郎さんとの対談動画は下記URLです。