高層ビルやデータセンター、空港、劇場などの空調から、自動車や半導体などの生産システムの自動化、さらにはガスなどのライフラインにいたるまで、社会のあらゆるインフラを「計測と制御」で支えてきたのがアズビル(旧山武)だ。社長の山本清博氏の話が興味深かった。
「AIという仕組みを使わなくても、制御というものはほぼ正しくできます。なぜなら、全て物理法則に基づいて動いているからです。ただ、石油精製や化学プラントのように操作変数がものすごく多い複雑なものについては、全部を従来のロジックで作るのは非効率です。あくまで『人間がロジックを作るのが難しい部分』をAIに担当させ、全体の信頼性は私たちが担保するという形です」
中には「AIで大丈夫か?」と心配するクライアントもいるが、制御の世界は9割は物理法則に則った従来通りのシステムで対応できる。しかし大規模プラントになると、人間だけでは時間がかかってしまう「残り1割」はAIを使うという。
「生成AIを使ったとしても、信頼性の担保は私たちの生命線です。ここが揺らぐと他業界からのゲームチェンジャーに取って代わられてしまいます」
ゲームチェンジを仕掛けてくるのは米国のテック企業だが、競争優位は「良質なデータをどれだけ持っているか」で決まる。アズビルはシステムを作って終わりではない。メンテナンスを行い、最終的な結果(良質なデータ)を知悉している。
生成AIは米国のテック企業の独壇場だが、産業AIなら日本企業の勝ち筋が見えてくる。