TAKARABE
JOURNAL本質を捉える視点

国葬

「G7の首脳が参列しなかったなどとマスコミは難癖をつけていますが、国内外から安倍晋三を慕って国葬に駆けつけ、彼の非業の死を悼む想いに満ち溢れていたことの方がどれほど価値があったか。そんな思いがつのった国葬でした」
安倍元総理の友人の感想だ。
会場で英国のメイ元首相の姿を見かけた友人は生前、安倍元総理がなにげなく語っていた言葉を思い出したという。
「メイさんは本当に人柄の良い人なんだよ」
海外からやってきた要人の多くが安倍さんへの心からの弔意をもって武道館を訪れたのだろう。弔問外交ありき、の来日ではない。そんな気持ちに呼応したのが菅前総理の弔辞だった。
官僚の作文ような弔事を長々と読んだ岸田総理や、形式だけの三権の長の弔辞だけだったら、国葬を強行した意義がわからなくなる。その危機を救ったのは菅前総理の切々たる追悼の辞だった。昭恵夫人が涙したのは菅さんの弔事の時だけだった。
最後に菅さんは、山県有朋が盟友・伊藤博文を偲ぶ歌を、自身と重ねて紹介した。
「かたりあひて 尽くしゝ人は 先立ちぬ 今より後の世をいかにせむ」
弔辞を読み終えた瞬間、葬儀ではあり得ないことが起こった。拍手がわき起こったのだ。
「菅さんの弔辞に対する自然発生的な拍手は、その気持ちを皆さんが共有したからだと思います」
安倍さんの友人の言葉が会場の雰囲気をあますところなく語っている。
安倍晋三さん、安らかにお眠りください。