株式会社リヴァンプ 玉塚 元一 氏
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日本の会社を「芯から」元気にし、刷新する

株式会社リヴァンプ
代表パートナー 玉塚 元一 氏

財部:
今日はぜひ、玉塚さんのヒストリーをお伺いしたいと思っていまして――。

玉塚:
2005年10月に会社を立ち上げてから、早いもので1年半が経ちました。もともと当社代表パートナーの澤田貴司が、キアコンというファンドをやっていて、ファンドマネージャーとして、厳しい投資家たちの100億円を超える資金を預かっていたんです。その経験が大きかったわけですね。

財部:
そうですか。

玉塚:
そうなると、当たり前のことですが、現実問題としては、いかに会社を安く買い、高く売るか。そして、どれだけリスクミニマムに短期間に投資を回収するか、という視点でビジネスを追及していくことになりますよね。

財部:
ファンドはそういうものですよね。

玉塚:
ですが、僕も澤田も事業や商売が好きだし、中長期的に強い会社を作っていくことが、ビジネスの本質だと思っています。だからファンドのリターンに軸足を置いて会社に向き合うのではなく、「その会社の何が問題で、何をほんとうに解決すれば、中長期的に強い会社になるか」というビジネスができるような軍団を作りたいと思っているんです。

財部:
それは新しい考え方ですね。

玉塚:
僕がユニクロを辞めようと決めたのは、05年の6月ぐらいでしたが、その頃澤田もファンドでは、自分のやりたいことは、なかなかできないと感じ、次のことをやろうと思っていたようです。もともと僕と澤田は、ユニクロの急成長期に柳井さんと共に、店舗から商品まですべてを手がけていました。そして澤田が先にユニクロを辞め、ファンドを始めたわけです。

財部:
そうでしたね。

玉塚:
じつは、僕はユニクロに入社する前、旭硝子の化学品チームにいたんですが、澤田は伊藤忠にいて、そこでも接点があったんです。ですから僕たちは、学校は別でも古い付き合いで、「そんな軍団が必要だ」と意気投合したわけですが、そのコンセプトに賛同してくれる先輩経営者も何人かいました。

財部:
そうですか。

玉塚:
当時はまだ、ある会社の債権を買い、その会社をバランスシート上きれいにして、債権を売却するということが横行していて、そこで稼ぐ人がたくさんいたんです。でも僕たちは「そうじゃない。その会社のオペレーションや経営をほんとうによくするような軍団が必要だ」といって、さまざまなスキームを考え、「でも、これで食っていけるのか」とか、いろいろ話をしていました。

財部:
理想だけでは食べていけませんからね

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玉塚:
はい。僕たちも、やる以上は、基本的に2つのことにこだわっています。1つは、ある企業が何とかブレイクスルーを達成しようとした場合、こういう準備を行い、このようにすれば、必ず会社はよくなるという仮説を立て、オーナーまたは最終意思決定者と合意すること。そしてもう1つは、僕たちもほんとうにデイリーの経営現場に参画させていただく、ということです。

財部:
そこの社員と同じように働くということですか。

玉塚:
僕たちは、ほとんどのケースで、当社から社長を送り出すとか、ボードの過半数に名を連ねるというようにして、経営の現場に突入≠オます。同時に、逃げ場のない経営責任を負うために、資本にも参加します。

財部:
コンサルなら前者だけ、ファンドなら後者だけですが、リヴァンプは両方なんですね。

玉塚:
創意工夫で、たとえば当社から資金を出して、株式先渡し契約を結ばせていただくこともあります。また大会社の子会社なら、自分たちの資金で足りないぶんを親会社から借りたり、あるいは銀行から、かつかつで借金をするとか(笑)。そうやって、自分たちで気合いを入れて逃げ場のない状況を作り、経営に直接参加させていただいているんです。現在、ロッテリアや紳士・婦人靴の企画・卸のトークツ・グループなどの再生案件も手がけていますが、昨年末にはアーリーステージなものとしてクリスピー・クリーム・ドーナツを新宿に出店して、これがすごく受けています。あとはコールドストーンクリマリーというアイスクリームショップも好調で。

財部:
ああ、知っています。

玉塚:
いま挙げたアーリーステージと再生ビジネスに加え、最近非常に増えているのが事業継承。企業のオーナーがだんだん高齢になられているので、当社ではここで一気に社内のストラクチャーを変え、戦略を書き直し、新しい血を入れてブレイクスルーを達成しましょう、と提案しています。この3タイプのビジネスを、60人弱の人間が集まって、リヴァンプはやらせていただいているんです。

財部:
その60人とは、どんな人たちなんですか?

玉塚:
やはり事業会社、コンサルティング出身の、オペレーション寄りの人材が圧倒的に多くて、そのうちの17、8人は何らかの形で社長を経験しています。

財部:
ほお。

玉塚:
僕と澤田、そしてデルコンピュータ(現・デル株式会社)元代表取締役社長の浜田宏。ほかにもベンチャー企業の社長経験者や、事業会社の責任者が数多くいます。コンサルタント出身者では、マッキンゼーやアクセンチュアなどで分析をやってきたけれど、「やはり自分で突入して′o営をやりたい」といって入ってきた人が圧倒的多数。残りは会計士や弁護士などのプロフェッショナルで、僕らはどちらかというと、事業者系に偏っているんです。

財部:
事業の経験者が多ければ、現場に入ってモノを言っても説得力がありますよね。

玉塚:
これが普通のファンドなら、圧倒的に金融系が多くて、オペレーション系が少ないと思いますけどね。

財部:
金融系マジョリティーのファンドだと、やはり無理がありますよね。

逃げ場のない経営責任を負うために、資本にも参加する

玉塚:
当社では、各案件について、身の丈にあった資本を持たさせていただいています。再生案件でニューマネーが必要な場合、ゴールドマン・サックスやリーマン・ブラザーズと組み、プロジェクトファイナンスで投資組合を作ったりして、資金を調達しています。でも当社の場合、多額の資金を背負い、それを使うことに重きを置いているわけではありません。あくまで対象の会社を元気にすることが目的で、僕たちはそこに一つ一つ向き合っています。

財部:
そうですか。

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玉塚:
当社では皆、普段から現場で、商売を必死になってやっていますが、月に一度全員が集まって合宿し、自分の案件における成功・失敗事例を報告するんです。たとえば、ここで人事制度を一気に変えたら、机上の空論でみんな辞めてしまったとか、システムを入れ替えたらまったく動かなくなった。あるいは、ブランディングにこれだけお金をかけたが、空回りになってうまくいかない、というように。考えてみると、ハンバーガーショップだろうがアパレル、靴屋だろうが、経営の本質部分には、もの凄く共通点が多いわけです。

財部:
いろいろな現場にでている社員が集まって意見交換する。

玉塚:
そうしたものを皆が持ち寄り、会議で徹底的に議論する。あるいはデイリーでも、どこかの現場で何か問題が起こったりすると、やはり皆で知恵を集めています。こうした取り組を続けてきた結果、お陰様でノウハウがかなり蓄積されてきたので、僕はここで、ほんとうに経営者が育っていくプラットフォームのようなものを作りたいんです。

財部:
そうやってリヴァンプ流というものが蓄積されていくんですね。

玉塚:
そうですね。やはり、この仕事をしていて思うのですが、たとえばファーストリテイリングは、相当に高いレベルのオペレーションを行っていて、理念もあり、ビジョンも明確で、しっかり回っている会社だと思います。しかしその一方で、残念ながら、ほんとうにガタガタの会社も世の中に数多くある。日本の場合、現場では皆が一所懸命に頑張っていても、トップが経営の方向性やメリハリ、スピード感、あるいはコミュニケーションや目標設定をうまく打ち出せず、結果が出せないケースが少なくないのです。

財部:
そのとおりですね。

玉塚:
僕たちは、そういうところに突入≠オていって、会社をよくしていきたいと思います。実際、その目標を達成するために、当社では、オーナーを交えて会社対会社で、まずは4〜6カ月間、事業計画を作るフェーズを持っているんです。

財部:
共同で?

玉塚:
はい。たとえばクライアント先が困っているという話があれば、「そうですか、わかりました」といって、店長にインタビューしたり、店舗を回って顧客に話を聞くとか、帳票をひっくり返したりして、何が問題かを考えるじゃないですか。