野村ホールディングス株式会社 氏家 純一 氏
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資本市場のインフラ作りが私のミッションだ

野村ホールディングス株式会社
取締役会長 氏家 純一 氏

財部:
武田さんとはどういうご関係ですか。

氏家:
武田國男会長は、夜ご飯食べたり、お酒を飲んだりすると本当に遊びの話題が豊富で楽しい方ですよね。好き放題に語りあいます。だけど、仕事で訪問するときは極めてきついですね。「それで、どうするんだ?」「その程度の用なら、もうお帰り」こういう感じなんです。野村のアドバイザリーボードに入って頂いているのですが、非常に丁寧に準備してこられるのが印象的です。

財部:
そうですか。

氏家:
両面持っていらっしゃる。一級の経営者っていうのはああいうものだな、と。 野村のアドバイザリーボードの準備は、まず部下の方に野村と武田はどういう風に違うのかっていうのをあげさせて、それをすべてご自身でチェックしてから、自分のアドバイスないしサジェスチョンをきっちり決めて出席されるんですよね。

財部:
ほー。

氏家:
仕事は誠実って言うかまっすぐと言うか。宴席になると好き放題に話される。どっちが本当というわけではなくて、両面持っていらっしゃいますね。武田さんはすばらしい。(笑)

財部:
僕はですね、松下の中村さんから武田さんを紹介していただいてから、資料を見たり、本を読んだりしているうち、正直言うと恐ろしい人だな、と思ったんです。とんでもない人だなあ、と。言っている言葉をそのまま受け取っていい人じゃないな、と緊張感を持って伺いました。その時も「いや、何にも考えてないよ」って感じだったんですが、非常に鋭いことをおっしゃっていました。

氏家:
はい。

財部:
それと同時に武田さんがどなたを指名するか僕はすごく興味がありましたが、 「次の経営者を紹介してください」と言ったらすぐに氏家さんの名前が出てきたんです。 武田さんは「財部さん、氏家さんはどうですか?いいですか?」と。 氏家さんのご都合もあるでしょう、と言ったら、「まあ聞きますけど」と。ちょっとまれに見る速さでして、僕の中では全く意外でした。氏家さんはロジカルですが、武田さんはーーー。

氏家:
武田さんは、私よりずっとロジカル。

財部:
やっぱり、そういうことなんですか。

氏家:
うん。極めてロジカル。武田さんは海外が長くて、生活は楽しかったけど、海外での仕事はえらい苦労して地獄だったと『私の履歴書』で書いていらっしゃいましたね。好き嫌いはとてもはっきりしているし、外国人となあなあで仲良くやる、っていう方ではないですよね。だけど、物事の進め方は、極めて合理的。関西の人っていうのはこんなに欧米人に近いのか、と。(笑) 武田さんは、ある意味、純粋培養の関西人でしょ。関西人のいいところが、結晶するとこういう風になるのかなとーー。

財部:
なるほど。

氏家:
仕事で行って座るとすぐに「今日は?」と。「こういう案件で」と返すと「それで」って。(笑)武田さんは「案件の中で、最もいいと思うやつを精査して、相手をある程度説得して、資金繰りまで付けてきちっとワンセットで持ってこれないのか?」で終わり。これだけですよ。(笑)

財部:
ほお。

氏家:
でもね、そんな良いワンセットでなんて、なかなかうまく出来ませんよね。それでもむこうは納得しない。「お前のところは言い出したはいいけれども仕事にならん。」って、そういう感じです。

財部:
ははは。

氏家:
きびしいですよ。でも一緒にお酒飲んで、ご飯食べていれば、ビリヤードの腕をどうやって上げたとか、パチンコか麻雀以外には力を使う気はしなくなったとか。そういった側面がたっぷり出てきます。どの遊びも私の5倍くらい幅広く深くカバーしていらっしゃる。(笑)やっぱり貴重な方ですよね。

財部:
お目にかかったとき、自分は非常に自閉的だ、友達がいないと武田さんご自身もこうおっしゃっていましてね。誰かと付き合おうとも全然思わないと言うんです。ですから、誰を指名するのかって、益々興味深かったんです。

氏家:
なんででしょうかね。理由は定かじゃないですが、確かによく話したり会ったりしてくださいますね。武田さんから電話がかかってきても、「ああ、話聞こうかな」となります。普通はあれだけの大きな会社の会長さんから電話がかかってくると、一拍置いておいて、企業金融部の担当者に最近の状況を聞いて、脇を固めてから取るでしょ。それをしなくて大丈夫ですからね。

財部:
欧米人に近いっておっしゃいましたがーー。

氏家:
そうですね。これは松下の中村さんもそう。人見知りであんまりご自分から話されない方でしょ。だけど僕は中村さんとお話するのはとても楽しみですね。これは出会いが良かった。アメリカにいた時、日本人学校を建て直さなきゃいけないって話があって計画はできたのですが、その時にバブルが崩壊しちゃいましてね。店たたんで帰国してしまう日本人がいっぱい出て、お金が足りなくなったわけ。

財部:
ほうーー。

氏家:
住友商事の今の会長の宮原さんや、米国松下の中村さんなんかと話して、一回約束したけど帰国するから寄付金はもう払いたくない、というけしからぬ人から、お金取立てにゃいかんと。(笑)「中村さんお願いします」といったら、「うむ」というだけ。後は何もおっしゃらないんですが、本当に力になって取り立て作業を進めてくださいました。

財部:
なるほどー。

氏家:
そのときから、この人はすごい、と思いましてね。その後、同じくらいに東京に帰ってきて中村さんは社長になられました。お目にかかりに伺いましたけど、こっちが30分くらいしゃべっても、むこうは1分くらいでしょ。30分一本勝負でやっているのに。(笑)一言で「わかった」とか「ダメだ」とか。中村さんも武田さんも合理的で無駄がない。だから、今回、中村さん、武田さん、って来て僕のところに来たのじゃ、これは「NO」はないと思いましたね。それにしても、あのお二人が会うと、どういう会話になっているのかしら。(笑)

財部:
これがおかしいんですよ(笑)。武田さんに言うとですね、「僕会ってないよ!」って言うんですよ。「そんなことないですよ、中村さんは会いに行ったって言っているし、最も尊敬する経営者だと言っていますよ」というと、「そうかな、俺会ったかなー?」ととぼけているわけですよ。まあ、この2人は面白いな、っていう感じはしましたけどね。

氏家:
中村さんからは、いくつか大事な仕事をさせていただきましたが、武田さんのところは、なかなかおめがねに適うものがなくて、「宿題ばっかり残っていて」と言われてます。まあ、中村さんや武田さんのところへは、お時間を頂ければ喜んでお伺いしますね。

財部:
氏家さんがアメリカの社会で長く仕事されていたということに関係はあるんですか?

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氏家:
一部あると思います。

財部:
それは、どういう部分ですか?

氏家:
感情移入の余地がない。ダメはダメ。嫌はイヤというのはすぐ分かります。考えとくわー、っていうのは全然だめ。考えっこないです。ただ論理だけを追っていく。こんなことをしたらどういう風に見られるんだろう、なんてことはまったく斟酌しないのでしょうか。もちろんあのお二方は欧米的な合理主義一本やりとも違いますけどね。

財部:
それっていうのは、氏家さんご自身にも共通するものなんですか?

氏家:
んー、やっぱりいくらかは共通するかもしれませんね。例えば、海外の手荒で可愛げがないおじさんたちに晒されてしごかれてきたというところは、関係しているだろうなと思います。私は最初「あいつには青い血が流れていて、宇宙人だ、火星人だ」と言われました。今は帰国して10年になりますのでそれほど血も青くはなくなったと思うんですがね。