住友ベークライト株式会社 小川 富太郎 氏
天国で神様にあった時は、「一緒にラウンドしませんか?」と声をかけてほしい。  …もっと読む
経営者の素顔へ
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プラスチックには、まだ「10代前半」の若さと可能性がある

住友ベークライト株式会社
代表取締役社長 社長執行役員 小川 富太郎 氏

財部:
最初に、全日空の山元社長とはどんなご関係なんですか?

小川:
大学のクラブ活動が一緒だったんです。昭和39年の入学の同期でして。

財部:
たしか、京都大学の応援部でいらっしゃいましたね。

小川:
そうです。山元社長がリーダーで、私はブラスバンドでサキソフォンを吹いていました。その頃、京大は野球、アイスホッケー、アメラグ(アメリカンフットボール)も、「それなり」の実力でしたが、一所懸命応援しました。また大学祭の前夜祭では、毎年グランドでファイヤーストームを炊き、舞台を作ったんですが、それを応援部が仕切りましてね。

財部:
そうなんですか。

小川:
ええ。どちらかというと、飲んで歌って騒いでという方が得意でしたから。でも、山元社長も私も、熱心に活動してはいましたが、とくに「自分が、自分が」とリーダーに名乗りを上げるようなタイプではありませんでした。ですから、応援部OBやわれわれの同期の中では、「山元君が上場会社の社長になっているのは摩訶不思議」だとか、「おかしい」と、皆が話しているんです(笑)。

財部:
学生時代の友人同士で、上場会社の社長を一緒にやっている気分というのは、いったいどういうものなんでしょう?

小川:
「何かおかしいなあ」というか、「君のところも変な会社だなあ」という感じです(笑)。同期の中から、一番社長らしくないのが2人選ばれたようなものですからね。私自身も、社長を拝命したときには「身の引き締まる思いで、身命を果たしてお受けします」と本心から思ったわけですが、「はたして自分は社長の器なのだろうか」ということは、つねづね考えていましたから。

財部:
そうですか。でも学生時代のコミュニティの中で、お互いの評価というものがありますよね。それが10年、20年、あるいは40年と時間を経て、互いに社会を引っ張っていくような年齢になったとき、かつての評価に違いは出てくるものなのでしょうか。

小川:
いまから思えばですね、(山元社長には)そういう素質はあったと思います。よく物事を考えて、自分の意見を持っていた人でしたから。ところが彼の姿をみている限り、他人を押しのけてでも上に座ろうというようなエネルギーとか、そんな印象は受けなかったので、皆が意外に思ったのかもしれませんね。

財部:
いまから20年以上前、80年代頃になりますが、その当時に私がお目にかかった経営者と、いま経営者になられている方々をくらべると、明らかに質が違うんです。80年代、要するに高度成長期、右肩上がりの「垂涎の時代」には、良くも悪くも単純な「社長らしい」イメージというか、我の強さやリーダーシップのようなものを、外見からも非常に感じたものでした。あるいはまた、政治家に近いような印象を受ける方も多かったような気がします。

小川:
ええ。

財部:
ところが90年代に、企業も国も「再生」やモデルチェンジを遂げるプロセスを経て、最終的に経営を担うリーダーが、自分自身で本当に秩序立てて深くものを考える方向に変わってきました。いま小川社長がおっしゃったように、世間が何をどういってるかとか、社会の動きがどうかということではなく、「これはこうでなければならない」という独自の考えを持たれている経営者が多くなってきた、という印象がありますね。

小川:
たぶん、デパートのような格好で、自社の全ラインで作られた全商品を販売することは、不可能になってきているのかもしれませんね。自社の強い部分にリソースを集中して、やっと生きていけるような世の中になったのではないでしょうか。もっともそれだけ、70、80年代にくらべると、企業経営の効率が良くなってきているような気もするのですが。

財部:
そうですね。

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小川:
住友ベークライトもその意味でいうと、プラスチックの汎用材料を作る会社から、お客様にテーラーメイドで、というか。われわれは「お客様の価値を高める」といういい方をするんですが、お客様がプラスチックを使うことで、ご自身のマーケットで競争に勝てるような商品・サービスを提供する会社に変わるというか、それを標榜し、そこに会社を収斂させているんです。そして、それを実行する執行役員の1人が私、ということですね。

財部:
いただいた資料に「CS」という、非常に象徴的な矢印のマークがありますが、ある意味で、原材料を提供する会社がCSを前面に出すこと自体、いま小川社長がお話されたことの裏返しですよね。

小川:
そうです。私どものミッションは、「プラスチックを通して顧客価値を創造する」、となっています。結局のところ、CSとは「お客様は神様」ではなく、お客様が持続的な成長をしていくための助けになるようなソリューションを提供することであり、われわれにとって、そのソリューションの提供方法がプラスチックなのです。ですから当社では、このミッションとCSとは同じものだ、と話していますよ。